【伊東大厚のトラフィック計量学】減少しはじめた自動車盗難

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第3の損失

自動車交通の2大損失と言えば、渋滞と交通事故である。しかし、ドライバーにとって盗難被害も無視できない損失だ。90年代後半、日本国内の自動車盗難は急増したものの、対策が効を奏し、07年の盗難件数はピーク時と較べ半減している。

警察庁によれば、盗難件数は、98年頃まで35000件前後でほぼ一定であったが、99年に増加しはじめた。03年には盗難件数64223件、保険金支払額は583億円にのぼったが、04年に減少に転じ、07年は31790件まで減少した(図1)。

保険未加入者も含めた全体の被害額は、保険金支払額と車両保険の加入率から、03年で1500億円、現在は1000億円程度と推定される。盗難の被害額は、兆の単位の交通事故や渋滞による損失とは較べようもない。しかし、03年の盗難件数は死亡・重傷事故件数と同レベルであり、発生リスクは低くはない。盗難は、自動車交通第3の損失と言ってよいだろう。

◆官民合同プロジェクトチームの取組み

盗難が増えた原因には、中古車輸出手続きの簡素化を悪用した盗難車の不正輸出、また暴力団対策法の強化により、盗難車売買が暴力団の新たな資金源となったことなどが挙げられている。

政府は01年、損保協会や自工会などとともに「官民合同プロジェクトチーム」を設立、02年から、キャンペーンやイモビライザ※の普及、盗難や不正輸出防止の取締りをはじめ、対策に乗り出した(写真)。

※イモビライザ:キーから発信される暗号を車両本体内のコンピューターで照合し、暗号が一致しないとエンジンが掛からない盗難防止装置

◆盗難が減ったのは?

盗難件数が減少に転じた要因は何だろうか。まず、取締りの強化が挙げられる。また盗難件数の内訳から、急増していた「キーを抜いていた」、つまりドアロックされた状態の盗難が減ったことがわかる(図2)。イモビライザなどのセキュリティ機能搭載車が普及したためだ。

また、ドアをロックしていない「キーをつけたまま」の盗難も減ってきた(図2)。損保協会のアンケートによれば、「キーをつけたままクルマを離れることがある」と回答するドライバーは年々減少してきている。これはキャンペーンの浸透を窺わせるデータだ。

このように、自動車盗難は早めに手を打ったことが効を奏し、盗難件数は98年の水準を下回るところまで減少した。プロジェクトチームの取組みの成果と言えるだろう。

《伊東大厚》

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