死角になりやすい“斜め後ろ”をサポート
日産自動車は先進安全技術のコンセプトとして、「セーフティシールド」を掲げている。これはクルマの全方位をカメラやセンサーが監視し、危険な状況が近づくとドライバーに警告したり、緊急時にはコンピューターが危険回避支援や事故ダメージ軽減の走行介入を行うというもの。まるで見えない繭のように、クルマを安全支援システムが取り囲むというヴィジョンだ。
その中で今回の技術説明会で紹介されたのが、車線変更時の運転支援システム「サイド コリジョン プリベンション」と、後退時の運転支援システム「バックアップ コリジョン プリベンション」だ。これらはクルマの斜め後ろから後方にかけてをミリ波レーダーによって監視し、衝突危険要因が接近すると警告するというもの。ミラーの確認や目視では死角になりやすい“斜め後ろ”をサポートしてくれるセンサーの眼である。
◆斜め後ろから接近する車両を検知、警告
なかでも特筆すべきは、サイド コリジョン プリベンションだろう。これは車線変更時に、斜め後ろから接近するクルマやバイクを検知し、衝突を未然に防ぐというもの。類似したコンセプトの先進安全装備としては、ボルボの死角情報システム「BLIS(ブラインド・スポット・インフォーメーション・システム)」などがあるが、日産のサイド コリジョン プリベンションはそれよりさらに一歩踏み込んで、危険を検知した後のインフォメーションの出し方にもこだわっている。
具体的には、サイド コリジョン プリベンションが斜め後ろから接近するクルマやバイクを検知すると、Aピラー車内側に設置されたインジケーターが警告音とともに明滅。さらに車線に近づいていくと、横滑り防止装置である「ESC(Electronic Stability Control)」が各タイヤのブレーキを個別制御し、接近するクルマに近づけないようにするヨーモーメントを発生させる。もっと感覚的にいうと、危険が接近する車線に出ないように、クルマが“やんわりと押し戻す”ような運転感覚をドライバーに与えるのだ。
むろん、このコンピューターによる走行介入は、ドライバーに対する警告が目的だ。実際に試乗で数回試したが、まるで“空気の壁に触れたかのように”やんわりと押し戻されるような感覚があるのみ。クルマに運転を押しつけられるような、嫌な感じはまったくしなかった。ハンドルをそのまま切れば警告を無視して車線変更もできる。
前編で紹介したECOペダルもそうだったのだが、日産の先進技術は「ドライバーを嫌な気持ちにさせずに、コンピューターの意志を伝える」ことがとてもうまい。特に「反力」をどう感じさせるかという研究では、かなりのノウハウがあると感じた。