【伊東大厚のトラフィック計量学】前倒し達成が見えてきた安全目標

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5000人台となった交通事故死者数

2007年中の交通事故死者数は、5744人(前年比−608人、9.6%減)と54年ぶりに5000人台となり、今年に入っても、5月初旬の段階の速報値で1623人(前年同期比−263人、13.9%減)と減少傾向は続いている。

また、依然多くの交通事故が発生しているものの、発生件数と負傷者数も3年連続で減少しており、ピークの04年と比べ発生件数が95万件から83万件、負傷者数は118万人から103万人となった(図1)。

政府は03年、「世界一安全な道路交通」を目指すとして2010年までに交通事故死者数5500人以下、負傷者数100万人以下という目標を掲げたが、指標値の推移から、今年にも2010年の目標は達成できる可能性が高い。

◆交通安全指標の国際比較

日本の道路交通の安全性は、国際的にみてどのように評価できるのだろうか。国によって規模が異なるため、人口あたりの事故件数と交通事故死者数で比較してみよう。前者が事故発生リスク、後者は死亡事故リスクを表す。

まず、人口あたりの死者数をみると、日本は04年の6.7から06年は5.7まで下がっている。各国とも低下傾向にあるため主要国中の順位は7位だが、07年は5.2となるため、死亡リスクについては世界トップクラスとなる(図2)。

他方、人口あたりの事故件数は、事故の定義が他国と違うのではないかと思うほど高い(図3)。これだけの差になったのは、日本の交通事故は70年以降一旦減少に向かったのだが、80年から再び増加に転じたためだ(図1)。80年から05年までの25年間は事故が減った国が多いのだが、日本は2倍近くも増えている (図4)。

◆これからの目標づくりに向けて

このように事故が多い現状では、人口あたり死者数が世界トップになったとしても、「世界一安全な…」とはいえないのではないか。事故件数は少なくとも現在の半分以下、欧州主要国の水準まで下げる必要があろう。

また、被害の大きな事故の対策にも注力すべきだ。英国やノルウェーでは重傷者(特に若年層)を減らすことも重視しており、アメリカは大型トラックの事故に着目している(表1)。こうした事例も参考に、真の意味で「世界一安全な道路交通」を実現するため、日本は目標を見直す時期に来ていると思う。

《伊東大厚》

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