新日鉄マテリアルズは、新日本製鐵先端技術研究所と、貴金属の使用量を大幅に減らした新しいタイプの排ガス浄化用触媒材料を共同開発したと発表した。
これまでのガソリンエンジン用排ガス浄化触媒は、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)の3種類の貴金属微粒子をアルミニウム系酸化物の表面に分散する。今回開発した排ガス浄化用触媒は、貴金属微粒子を分散させる酸化物の成分と組織を工夫したもの。
開発した触媒は、プラチナを使用することなく、条件によってはロジウムも使用せずに、十分な触媒活性が得られる。この結果、貴金属の使用量を従来に比べて、約7割削減することが可能となる。
新型触媒では、貴金属微粒子を分散する酸化物に、従来のアルミニウム系酸化物の代わりに、鉄系酸化物を使用する。鉄系酸化物にアルカリ土類金属を添加し「ナノ複合結晶組織」とすることで、これまでにない高い触媒活性を得ることができる。
ナノ複合結晶組織は、複数の異なる結晶相を組み合わせてナノレベルで複合されたもので、この組織と貴金属微粒子との強い相互作用が起こり、貴金属微粒子の電子状態を変化させ、触媒活性が飛躍的に向上すると見られる。
従来のアルミニウム系酸化物は、性能を向上させるため、セリウムやランタンなどの希土類金属を添加するが、新型触媒では希土類金属を使用しなくても高い触媒活性が得られる。加えて、新型触媒は、幅広い温度の排ガス条件で安定した触媒活性が得られる。
さらに、新型触媒は900度に達する排ガスの高温にも耐えることも確認できている。
新日鉄マテリアルズは、今回開発した触媒材料で、すでに二輪車向け排ガス浄化触媒としてサンプル評価を開始しており、ディーゼルエンジン触媒などの四輪車向けへの適用も視野に入れている。今後は、すでに製造販売している金属ハニカム基材と新型触媒材料を軸にして、環境部材分野への事業展開を強化する方針だ。