3 | のどかな時代よのう… |
今日のマイヤーニFIATシリーズは、さまざまなバリエーションがあるが、基本はアーモンドとヘーゼルナッツを混ぜたクリームである。メーカーは、ずばりこれを「クレマ・フィアット」(フィアット・クリーム)と名付けている。口の中でとろけると、それらが絶妙なハーモニーを奏でる。
当時フィアットの誰かがマイヤーニのチョコを発見し、「これ、うまいっすよ。景品にいいっすよ」と声をあげたに違いない。ちなみにイタリアの有名な劇作家で、三島由紀夫にも影響を与えたG. ダヌンツィオも、「ボローニャに行くたび、マイヤーニでFIATチョコを買う」と往年に記している。
ところで今日、巷には「コラボ商品」が溢れている。いずれも電通・博報堂といった広告のプロたちによる、度重なる企画会議の末に生み出された商品であろう。それでいて、市場から瞬く間に消えてゆくものの何と多いことか。いっぽうで、偶然の産物である記念品チョコが商品となって97年も存続している。
どうやらフィアットも商標の使用について、チョコレート屋さんに対して、今さらうるさいことは言っていないと見た。思わず「のどかな時代よのう……」と、ほっとする一品。それがFIATチョコである。
筆者紹介:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA --- コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』『幸せのイタリア料理!』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)がある。新著に『Hotするイタリア』(二玄社)。 |