【池原照雄の単眼複眼】国内市場、未曾有の大調整と微妙な変化

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トヨタの苦戦が象徴する「深刻さ」

国内市場が底の見えない低迷を続けている。2007年度上半期(4−9月)の総販売台数は前年同期比8.1%減の248万台と、1980年度以来の低水準となった。年間では500万台ラインも危うい展開だ。自動車業界には、かつて経験のない大調整だが、セグメントによって微妙な変化を見せる市場をしっかり吟味する必要もありそうだ。

登録車で9.5%の落ち込みとなった9月の動向で意外だったのは、トヨタ自動車の伸び悩みだ。レクサスブランドを含む総販売は前年同月比4.2%のマイナスとなった。総市場が1割近く減少するなかでは大健闘だろうが、同社の苦戦ぶりが市場の深刻さを物語っている。

トヨタは5月以降9月まで、国内に7モデル(9車名)の新型車を集中投入した。今月もさらに2車種の投入を予定しており、過去最高ペースの新モデルによるテコ入れを推進している。

◆「数字」をつくるレベルではない…

一方、7月からは前年実績を連続してクリアしようというキャンペーン「J100」を展開中だ。7月は中越沖地震の影響で、前年割れとなったものの、8月には1年ぶりに浮上していた。最強の販売ネットワークを誇るトヨタの底力を見た思いだったが、9月は再び水面下に沈んでしまった。

トヨタの資金力をもってすれば、ある程度の「数字」をつくることは可能だろう。だが最早、市場の状況がそうしたレベルにはないということだ。9月の自工会会長としての定例会見で、張富士夫会長が、思わず「ここまで重いとは」と漏らしたひと言が、すべてを物語っている。

◆普通乗車に潮目の変化も

昨年秋口までは排ガス規制特需で潤っていたトラックの落ち込みも総市場のダメージとなっている。トラック全体では、9月は前年同月比31%ものマイナスとなった。

ただ、乗用車(登録車)では需要の質的変化も現れている。張会長は「7月からは普通乗用車がプラスに転じた。車種によっては上向きの芽も出ている」と指摘していたが、実際、9月の普通乗用車は同22%増と大幅に伸びた。

最近はボディ幅が小型乗用車の規定(1.7メートル)を超えるモデルが増えていることも一因だろうが、高価格帯のクルマの売れ行きは回復してきたと見ることができる。

販売部門を含めたグループ力で、そうした市場の潮目の細かい変化にも機敏に対応することが、マイナス成長下でのダメージ軽減、いや収益アップにつながる。

《池原照雄》

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