【池原照雄の単眼複眼】いすゞ・日野の提携、まずはそろり発進

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短期で成果が得やすい分野から

いすゞ自動車と日野自動車がトラック用ディーゼルエンジンの排ガス後処理システムなどの共同開発で合意した。両社の提携強化は、昨年11月にいすゞとトヨタ自動車が資本・業務提携した流れを受けてのものだ。トラック業界の世界的な再編の動きから、「遠戚関係」になった両社の接近は当然ともいえる。ただ、今回の提携の中身は薄く、ゆるやかな発進となる。

いすゞと日野は、2004年から折半出資による「ジェイ・バス」(石川県小松市)で両社のバス生産を行うなど、協業を進めている。今回は排ガス後処理システムと、大型トラック用キャブ(運転台)の共同開発で合意した。

排ガス後処理システムは、09年に施行予定の次期排ガス規制(ポスト新長期)に対応する「DPF」(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)や「尿素SCR」システムなどが対象になる見込み。もう一方のキャブと合わせ、共通化によるメリットを比較的短期間に得やすい分野となる。

◆「本丸」に踏み込めない、いすゞの事情

だが、時間はかかるものの大きな提携効果を生み出す「本丸」へは切り込んでいない。8月24日付の日経新聞朝刊は、1面トップで両社が大型と小型のエンジンを分担して開発・生産する検討を開始したと報じた。これに対しては同日、両社が揃って否定コメントを出した。

こうしたエンジン本体分野こそが、まさに本丸となろう。しかし、いすゞは「ディーゼルエンジンで世界のリーディングカンパニー」(細井行社長)となるのが、企業ビジョンの柱。自主開発を逸脱する協業化には、安易に踏み切れないという想いが強い。日経報道は日野側の要望に近い内容と筆者は見ている。

◆トヨタとの提携は「原則」いすゞ主体

23日にトヨタといすゞが発表した「小型ディーゼルエンジンの業務提携」も、合意までに時間がかかったなという印象だ。資本・業務提携の基本合意は昨年11月。その後、開発するエンジンの基本仕様や開発・生産体制などを協議してきた。

「それぞれ技術に自信をもっているから調整は容易ではない」(いすゞ首脳)ということだが、いすゞ側は当初から開発も生産も「当社が主体的に行う」(技術担当役員)という立場だった。23日のニュースリリースには、今後の詳細の検討では「いすゞが主体で行うことを原則に進めていく」という一文が盛り込まれた。

「原則に」というところに、相当な議論を経て両社が歩み寄った跡がうかがえる。もっとも、「自主性」を重んじながら提携を進めるというのが昨年11月の基本合意の出発点ではある。両社が安易な妥協に流れずに合意点を探ることが、将来、しっかりした提携の根を張ることにつながるのだろう。

《池原照雄》

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