昨年10月、福岡県前原市内の国道202号で、酒気帯び状態でクルマを高速度で走行させ、原付バイクに追突する事故を起こして運転者を死亡させたとして、業務上過失致死などの罪に問われた34歳の男に対する判決公判が1月29日、福岡地裁で開かれた。裁判所は実刑を命じている。
問題の事故は2006年10月16日未明に発生した。前原市杉浦付近の国道202号を走行していた新聞配達員の原付バイクに対し、後方から100km/hを超える速度で進行してきた乗用車が追突した。バイクに乗っていた20歳の男性は数十メートル弾き飛ばされ、全身強打で間もなく死亡した。
クルマを運転していた34歳の男は酒気帯び状態。警察では業務上過失致死と道路交通法違反(酒気帯び、速度超過)の容疑で逮捕したが、後の調べで男はクルマを高速度で走らせながら、バイクへの追突直前は床に落とした携帯電話を拾おうとしており、まったく前を見ていない状態だったことも明らかになった。一時は危険運転罪の適用も検討されたというが、結局は業務上過失致死などで起訴された。
1月29日に行われた判決公判で、福岡地裁の伊藤聡裁判官は「被告が運転するクルマは、事故の直前には110km/hに達していたと考えられる」と認定し、その上で「被告は酒にも酔っており、高速度で走行していたにも関わらず前方を注視していなかった」と指摘した。裁判官は「まさに走る凶器と化していた言っても過言ではない。極めて悪質であり、刑事責任は重大である」として、被告に対して懲役3年6カ月の実刑を命じている。