新型日産『スカイライン』(11月20日発表)は、シャーシ、エンジンなどの主要コンポーネンツのほぼすべてが刷新されている。ボディ剛性は曲げ、ねじれとも旧型に比べてはるかに強固になり、エンジンもパワーアップされた。
そのなかで唯一、スペック的にいささか旧世代の感をぬぐえないのは、5速ATだろう。日産車の多くはジヤトコという変速機メーカーのトランスミッションを採用しているが、ジヤトコはまだRWD(後輪駆動)用の6速ATをリリースしておらず、やむなく5速になったものと思われる。
日産のあるエンジニアは、「たしかにATのステップが5段というのはマイナス要因ではないかという声もありました。6段も試していたのですが、開発が間に合わなかった。性能やフィーリングが不完全なものを載せるよりは、確立された技術を使って、あとはセッティングの煮詰めで勝負しようということになったんです」と、積極的な理由で5速ATを選択したのではないことを明かす。
が、ドライバビリティを左右するエンジン、トランスミッションの統合制御のセッティングの煮詰めについては、5速によるネガを感じさせないレベルを達成すべく、入念に行ったという。
「全開加速のよさを目指すのはもちろんですが、それと同等以上に重視したのは、アクセル開度に駆動力がしっかりとついてくるような制御の実現でした。クルマにおけるスポーティなフィールとは、ただ速いというだけではありません。ドライバーの意思にいかに忠実にクルマが反応するかが大事なんです。駆動力をドライバーが積極的にコントロールする楽しさを味わえるセッティングに仕上げられたと思います」(前出のエンジニア)
日本市場でスカイラインと正面からぶつかるライバルは、価格帯は異なるが、モデルの性格という点ではトヨタのスポーティセダン、レクサス『IS250/350』が最右翼。実際、アメリカでは日本より販売価格ははるかに接近している。両モデルはパワーウェイトレシオでほぼ互角。
変速ステップが1段少ないというハンディを背負うスカイラインだが、「フィーリングだけでなく実際の動力性能でも、ISに決して負けていない」(前出のエンジニア)という。
スカイラインを次のマイカー候補に考えているユーザーは、試乗のさい、パワートレインの仕上がりぶりもよく味わっておきたい。