高度なマニューバ(機動)を実現するレシプロのアクロバット機の流麗なスタイリング、自動車とはまったく異なるエキゾーストノートは、コアな航空機マニアでなくとも大いに引きつけられるものがある。
「2006“オートボルテージュ”アエロバティックス日本グランプリ」(3−5日、もてぎ)の楽しみは、世界最高峰のパイロットによる高度な空中演技だけではないのだ。
今回ツインリンクもてぎにお目見えしたアクロバット機は、大きく分けてロシアの航空機メーカー「スホーイ」とドイツメーカー「エクストラ」の2種類。スホーイはラジコン飛行機マニアの間でも人気のある「Su-26」と、パワーアップ型の「Su-31M」。どちらも排気量10リットルのヴェデニエフ社製スーパーチャージャー付き空冷星型9気筒エンジンを装備し、星型特有のバラついた排気音を響かせて飛ぶ。
エクストラは300psの「300S」と330psの「330L」。こちらはセスナ機などでおなじみの名門、テキストロン・ライカミング社のアクロ専用水冷水平対向6気筒8.8リットルを搭載する。レブリミット2700rpmという“高回転型”だけに、エンジン音は甲高い金属的な響きだ。
どちらの機体も、乾燥重量は600kg台と、今日の軽自動車より軽い。横転率は400度/秒、すなわち操縦桿を横に倒すと、1秒で1回転以上横転するという激しい機動性能を持つ。最大荷重は実に11G前後と、ジェット戦闘機の倍近くに達する数値をマークしている。
主翼は普通の飛行機は上面が大きく膨らんでいるが、背面飛行を多用するアクロ機は上面、下面がほぼ対称の曲面となっており、揚力は純粋に迎角を取ることで発生させる。同様の理由で、機体を水平安定させるための上反角(翼が根本から翼端に向けて上向きになっていること)もついていない。
過去のアエロバティックス日本グランプリでは、このほかフランスのCAP、アメリカのエッジといった多様な機体が舞っていた。開催を重ねるに従って、ふたたび参加機の種類が増える可能性もある。メカ好きにとって、アエロバティックスはまさに見どころ満載のイベントと言えよう。