光岡自動車の新“ファッションスーパーカー”『オロチ』(大蛇)のデザインアイデンティティは、その名が示す通り、古事記に登場する8つの頭、8つの尾を持つ蛇の怪物「八俣遠呂智(やまたのおろち)」。
エクステリア、とくにフロントマスクはモンスターめいており、ヘッドランプにはショーモデルと同様、クリアレンズカバーに毒蛇のような細長い縦型の瞳が入れられている。爬虫類をモチーフとすることは、一般的な自動車のデザイン文法からは完全に外れた手法。それだけにオロチのフロントマスクは、世界のどの量産車にも似ていない。
フロントマスクをはじめ、ボディの至るところでカーブラインや面がぶつかり合うオロチのデザインは間違いなく「露悪的」な部類に入る。多くのユーザーにとって、到底すんなり受け入れられるデザインではないが、光岡にとっては、そんなユーザーの反応こそ狙い通りというところだろう。
“普通にカッコイイ”というデザインでは、ブランドイメージも独特のデザインアイデンティティも持つ老舗のスーパーカーに並ぶことなど、到底かなわないからだ。
異形のスタイリングと1050万円という車両価格は、光岡にとって冒険そのもの。光岡進会長は「営利企業としては作るべきではないクルマだと思う」と語る。まさに何から何まで“確信犯”的なクルマ、それがオロチなのである。