1 | 盛り上がり、五輪の比でない |
自他ともに認めるカルチョ国民・イタリア人にとって、ワールドカップは今年最大のイベントである。
名門ユベントスの総監督が有利な審判選定を迫っていたことが伊サッカー界全体の不正疑惑に発展しても、賄賂がわりにマセラティ『クアトロポルテ』が使われていたことが発覚しても、ワールドカップはそれを掻き消してしまうだけの効果がある。
商戦という点から見ても賑やかだ。大新聞は観戦ガイドの付録を売り物にし、電器店では大型テレビや携帯テレビの売り込みに力が入る。
「当たり前だろ」というなかれ。郷土意識が強く他都市のイベントに興味が薄いイタリアで、2月のトリノオリンピックは、実は地元トリノでしか盛り上がっていなかった。それに比べると、同じ年だというのに、W杯はなんとも対照的な盛り上がりなのである。
テレビでは、親善試合が主要テレビ局で連日連夜のように放映されるようになった。カルチョ、カルチョ。楽しみにしていた連ドラもブッ飛ばされる。ここはひとつイタリアのテレビ局も往年の『芸能人水泳大会』の技術を導入し、画面脇・丸囲みで別の映像を放映してほしい、とも思っているのだが、そんなことを言ったらファンに張り倒されるのがオチだ。
筆者紹介:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA --- 国立音楽大学卒。自動車誌『SUPER CG』(二玄社)記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わず多くのファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』における軽妙な語り口も好評。主な著書に『イタリア式クルマ生活術』、『幸せのイタリア料理!』、『カンティーナを巡る冒険旅行』、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(いずれも光人社)。 |