【神尾寿のアンプラグド】ドコモのクレジット「DCMX」の衝撃

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4月4日、NTTドコモがクレジットサービス「DCMX」(ディーシーエムエックス)を開始すると発表した。4月28日から申し込み受付と一部のサービスを開始する。

ドコモは昨年から、三井住友カードと共同でおサイフケータイ向けのクレジット決済サービスのブランド「iD」を推進してきた。西日本高速道路のSA・PAにおけるFeliCa決済導入実験でも、iDが採用されているほか、am/pmやローソン、東京無線協同組合(東京無線タクシー)など多くの事業者がiD採用を表明している。

今回、発表されたDCMXは、このiDを使うドコモがイシュア(クレジットカード発行会社)になるサービスだ。

◆ブランドとイシュアの違い

少しわかりにくいので、クレジットカード業界の構造を簡単に解説しよう。クレジットカード業界は大きく3階層に分かれて役割分担をしている。

最上位に位置するのが「ブランド」であり、主にルールの策定やプラットフォームの提供を行う。プラスティックカードの世界でブランドといえば、「VISA」や「MASTER」、「JCB」など。おサイフケータイ向けに限定されるが、「iD」もブランドに位置づけられる。

次にクレジットカードの発行業務や会員サービスなどを提供するのが「イシュア」(クレジットカード発行会社)である。クレジットカードを裏返した時に、右下に書かれている“発行元”の会社がイシュアだ。代表的なのは、三井住友カード、JCB、クレディセゾンなど。ETCカード発行枚数トップのトヨタファイナンスも、イシュアである。今回、発表されたDCMXは、NTTドコモがイシュアとなるクレジットサービスだ。

最後にあるのがアクワイアラ。これはクレジット決済サービスが利用できる加盟店の開拓と管理を行う。ここは大手イシュアが兼ねているケースが多く、例えば三井住友カードはiDと(三井住友VISAカードの)VISAのアクワイアラである。一方、今回DCMXを発表したドコモは、アクワイアラ業務は行わず、iDの加盟店使用料を三井住友カードに支払うスキームになっている。

この他に、クレジットカードの世界には「提携カード」がある。これはイシュアが様々な事業者ブランドのクレジットカードを発行するものだ。クルマの世界でお馴染みなのが、ガソリンスタンドのクレジットカードだろう。例えば、トヨタファイナンスは提携カードとして「JOMOカード」を発行している。また、全日空の「ANAカード」のように、三井住友カードやJCBなど複数のイシュアが提携カードを発行しているケースもある。

一方、提携カードと対になるのが、イシュア自身のブランドで発行する「プロパーカード」だ。三井住友カードなら「三井住友VISA」、JCBなら「JCBカード」、トヨタファイナンスならば「TS3」である。ドコモのDCMXは、プロパーカードという位置づけでスタートする。

◆DCMXサービスは2種類ある

DCMXのサービスは2種類が用意される。

ひとつは「DCMX mini」。これはDCMXの簡易版という位置づけで、利用限度額は1カ月あたり1万円と少額ながら、満12歳以上のドコモユーザーであれば、特別な理由がないかぎり利用ができる(未成年者は親権者同意書の提出が必要)。

例えば、フリーターや家事手伝いなど、これまでクレジットカードの審査が通りにくかった層も利用できる可能性が極めて高いのが特徴だ。利用料金は翌月の携帯電話料金と合算されて請求される。

DCMX miniの年会費は無料。プラスティックカードは発行されない。あくまで「おサイフケータイだけ」で使うサービスであり、感覚としては、携帯電話コンテンツの利用に近いと言えるだろう。

そして、もうひとつが「DCMX」だ。こちらは通常のクレジットカードと同じ扱いで、満18歳以上が申し込み対象になる。利用限度額は20万円以上からで、おサイフケータイを使った「iD」の利用はもちろん、「VISA」もしくは「MASTER」ブランドのプラスチックカードも発行される。そのため“普通のクレジットカード”としても使える。ゴールドカードやプラチナカードの設定もあり、サービス内容は他のクレジットカードと同じである。

◆DCMXのインパクト

これまでドコモは、三井住友カードと共同で「iD」ブランドを推進してきた。しかし、実際にiDが使えるクレジットカードは三井住友カードの「三井住友VISA」であり、会員獲得や利用促進の先頭に立つことはできなかった。

しかし今回、ドコモ自身がイシュアとしてDCMXを始めることで、ドコモが保有する約5000万人の顧客に対して、積極的な会員獲得を行うことができる。

まず、ドコモは今後、発売するすべてのおサイフケータイにおいて、iDとDCMXのアプリをプリインストール(初期導入)する。オンライン入会の仕組みも簡単にしており、DCMX mini/DCMXともに簡単な手続きで利用申し込みができる。ドコモは主力ラインナップの大半をおサイフケータイにしているので、今後「ドコモユーザー=DCMX潜在顧客」になるのだ。

さらにDCMXは書面による入会申し込みも可能であり、全国に約1400店舗ある「ドコモショップ」が対面の入会受付やサポート拠点になる。これにより携帯電話の扱い方に詳しくない人や、オンライン入会を嫌う層も、しっかりと取り込める。このインパクトは大きい。

DCMXはドコモの持つ圧倒的な「数の力」を余すことなく使える仕組みになっており、少額決済で使いやすく、若年層を中心とした“クレジットカードを持たない/持てない”層まで取り込める。その影響力の大きさに、自動車業界も注目しておいて損はない。

《神尾寿》

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