【新連載*池原照雄の単眼複眼】トヨタ、米現地生産比率急落とその先

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米販売今年も好調で246万台に

今年の生産計画906万台(ダイハツ工業、日野自動車を含む)を掲げ、世界1の座が濃厚となってきたトヨタ自動車。昨年は小幅マイナスになった国内を除き、世界各地でのトヨタ車人気が増産を支える。原動力は、今や最大の販売先となった米国市場だが、ちょっと気掛かりな点が見えてきた。販売増に需要地での供給拡大が追いつかず、今年は現地生産車の比率が急落必至なのだ。
 
トヨタの2005年米国販売は前年比10%増の226万台と過去最高を更新。このうちカナダ、メキシコを含む北米生産車の比率は62%程度だった。今年の販売計画は9%増の246万台。ダイムラークライスラーのクライスラー部門を抜いて、米市場で「ビッグ3」に躍り出るのが確実だ。

◆テキサスの寄与は07年以降

246万台のうち北米生産車がどの程度になるかは明らかにしていないが、現地生産動向などを踏まえた筆者の推計では50%台の半ばくらいまで落ち込みそうだ。昨年の北米生産は、156万台でこのうち約9割が米市場に向けられた。今年は年20万台の能力をもつテキサス工場が稼動開始するものの、ラインオフは年末で現地車比率の向上には寄与しない。

逆に『カムリ』『カローラ』という2大看板車が全面改良するため、生産準備の影響で北米生産は若干落ち込むかもしれない。その分、日本からの輸出ドライブがかかるのは避けられず、今年の全世界向け輸出計画は15%増の235万台と、これも過去最高を更新する。輸出の増加について渡辺捷昭社長は「需要があるとろで生産するのが基本だが、モデルミックスなどでまだ対応できていない地域もある」と言う。

◆「いたちごっこ」が続きそう

日本メーカーの現地車比率は、ホンダがほぼ8割、日産自動車が75%水準にある。トヨタの場合、2台に1台近くが輸入車となるのだから、「需要地生産」の遅れが際立つ。しかも、米国市民によるトヨタ車支持は続きそうなので、07年以降も販売は拡大、現地車比率はしばらく50%台にとどまる懸念がある。

トヨタの北米生産能力は現在151万台。23日に発表したメキシコの年2万台増強(07年)やテキサス、カナダ第2工場(年10万台・08年11月稼動)、さらに富士重工業の米工場への生産委託を年10万台とすると能力は193万台となる。ただ、このレベルに到達するのは09年であり、恐らく米販売は300万台をうかがうレベルになっていよう。販売増と現地生産の拡大は「いたちごっこ」の様相を呈する。

進出先で「良き市民」を標榜するトヨタは、経済摩擦の芽に先手を打ってきた。更なる能力増がテキサスなのかカナダ第2となるのか、あるいはミシガン州あたりに新工場を建設するのか——中期的な現地車比率引き上げのロードマップを提示する段階に来ている。

《池原照雄》

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