新型ロードスターに乗ったときに一番深く感じたのは、いわゆる手作り感だった。もちろん最新の工業製品なので、構成パーツのほとんどは一品モノというわけではないし、製造も組み立てロボットのもとで生産されているのはわかっている。それでも、手作りの雰囲気を感じてしまったのだ。
新型ロードスターの副主査を務めた山本修弘さんは「主査の貴島にとっても、ワタシにとっても、このクルマの開発に携われることは非常に幸せなことでした。ほかの開発者たちも、その点は共感してくれたようで、苦しいときも諦めない絆を持つことができた、非常にチームワークのよい開発陣でした」
「しかしながら、メカニカルプロトタイプができたときには、じつはあまり上手くはいきませんでした。このクルマのサスペンションジオメトリーなどはRX-8に近いものを使用しています。その結果、走行性能自体は非常に高いモノができていますが、乗っていて楽しくはなかったんです」
「そこでテストの際にはつねに、初代と2代目のロードスターを同行させ、先代までが持つ走らせたときの心地よさを出せるように開発を進めました。そして、プロトタイプが仕上がったら、マネージメントドライブという、上司によるチェックを30回近く行なってもらいました。その結果、私たちも納得できる現在の仕様を作り上げることができました」
「その中では、ある開発スタッフは足まわりのブッシュのゴムを手作りで削って製作したりと、大変な思いをしてくれました。もちろん、ロードスターもコンピューターによるシミュレーション設計を行なっていますが、最終的にはそのシミュレーションが人間の感性にあっているかどうかは必ず確認しました」と教えてくれた。
やはりロードスターのコンセプトが人馬一体というだけあり、シミュレーションだけには頼らず、人の手によって最終的なセッティングが施されていたようだ。そうでなければ、このリニアリティの高い乗り味を出すことはできなかったに違いない。ロードスターに、少しでも興味があるのなら、この乗り味を是非一度は体感してもらいたい。