渋滞予測システムの投入で出遅れたトヨタ。しかし、G-BOOK ALPHAのそれは、周到に研究開発されたシステムだ。
トヨタの渋滞予測システムを核となるのが「3レンジ複合予測方式」と呼ばれるアルゴリズムだ。3レンジ複合予測方式では、短期予測の「ショートレンジ」、中期予測の「ミドルレンジ」、長期予測の「ロングレンジ」の3つのセグメントにわけて予測処理を行う。
ショートレンジ予測では現在の交通状況の伝播現象を中心にシミュレーションし、リアルタイム渋滞情報から交通流の変化を解析する。
ミドルレンジ予測は現在の交通状況に似た過去の渋滞類型パターンを検索し、これに現在の交通状況のデータも加味しながら渋滞変化をシミュレーションする。
最後のロングレンジ予測では、現時点の交通状況は考慮せずに、過去の渋滞情報から将来予測を組み立てる。
3レンジ複合予測方式のポイントは、これら3つの異なるアプローチで解析した渋滞予測結果を、独自のアルゴリズムで合成し、最も現実解に近いシミュレーション結果を導き出す点にある。
このアルゴリズムを完成させるために、トヨタでは2001年からVICS渋滞情報の収集・解析を行ったほか、調査車両を実際に走らせてデータ収集を行ったという。
「VICSデータの収集は2001年からやっていたのですが、調査車両による実走テストやアルゴリズム開発で時間がかかりました。結果として、4年間もかかってしまった(苦笑)」(e-TOYOTA部の友山茂樹部長)
しかし、時間をかけて開発しただけに、「後発の強み」は遺憾なく発揮されているようだ。3レンジ複合予測方式はトヨタの渋滞予測研究の塊であり、そのアルゴリズムは豊田中央研究所によって特許出願中である。まさに満を持して投入した渋滞予測テクノロジーと言える。