別納カード無効化が原因…高速道路で終日混乱続く

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1日、全国の高速道路や有料道路でETC(ノンストップ自動料金収受システム)が誤作動を起こし、開かなくなったバーにクルマが接触する事故が2000件以上発生した。

日本道路公団(JH)では事故の原因を調べていたが、3月31日で廃止された別納カードの誤使用と、サーバー停止という2種類のトラブルが同時多発的に発生。これが原因でトラブルが続いたことが明らかになっている。

日本道路公団(JH)によると、トラブルは1日の午前2時ごろから発生した。JHでは、大口利用者を対象に実施していた「別納カード」制度を3月31日で廃止。4月1日からはこれに代わる「大口・多頻度割引」という制度が導入している。

これまでに発行した別納カード約200万枚のうち、同制度への引継ぎ更新が済んでいない約150万枚(3月31日までに期限切れ約80万枚、引継ぎ手続き未完了約70万枚)のデータ無効化作業を行う必要がある。

そのため、各料金所に設置されたサーバーに1日未明からデータ送信を始めたところ、全国78カ所の料金所で午前2時ごろからサーバーが突然停止。ETCカードや、ETCレーンの利用ができなくなった。

これと前後して、新制度への引継ぎ未完了状態の「ETC別納カード」を車載機に挿入した車両がETCレーンを通過しようとした際、開閉動作を行わないバーに接触や衝突するトラブルも相次いだ。

無効カードデータの登録が完了した料金所では、引継ぎ手続きが未完了の別納カードを「無効」と判断しているため、これによってバーが動作しなくなっていた。

定められたレーンへの進入速度(20km/h以下)を保っていた車両は事故を起こさずに停止できたが、バーが開くものと信じてそれ以上の速度で進入した車両がバーを弾き飛ばした。

事故は1日午前0時から午後9時までの21時間に全国で2134件が発生。このうち2件は衝突を避けようとレーン内で急停車した車両に後続車が追突、後続車のドライバーが負傷するなどの人身事故に発展している。

新制度への引継ぎが未完了の無効カードでも、ETCレーンを通過した車両の車載機に挿入されたカードのIDは料金所サーバーが記録しており、別納カード発行時の登録情報を使って後日の料金請求が可能であることから、バーへの衝突事故を防ぐ目的でカードの無効情報を一旦停止。カード効力を一時的に復活させる処理を行った。

新制度への引継ぎに時間を要するため、当面の間は従来の別納カードがそのまま使える見込みだ。

サーバーのトラブルについては1日午後4時30分までに復旧し、ETCレーンやETCカードが使えないというトラブルも順次解決している。

こちらは別納カードとは関係がない、一般のETC利用者にも影響が出ており、JHでは「現金で割引なしの料金を支払った人も多かった。現金支払い分をETCを利用した割引料金へ振替するなどの手続きを取りたい」とコメントしている。

また、JHでは今回のトラブルについて「別納カード廃止の情報が周知されていなかったことがそもそもの原因。新制度への引継ぎも円滑には進まず、無効になった別納カードが約70万枚も出回ることは想定していなかった」と説明している。

だが、別納カードが廃止されるという情報は事業者を対象にしたアナウンスに留まっており、実際に高速道路を使うドライバーにはほとんど行われてこなかったという背景がある。

今回のトラブルに遭遇して初めて廃止の事実に気がつき、対応した料金所の職員に対して「集中工事の情報のように、もっと大々的に宣伝してほしかった」とクレームを言うドライバーも多かったという。

JHでは「周知方法については再考の余地がある」とも話している。

《石田真一》

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