警察庁長官が首相の苦言に謝罪…パトカー強奪未遂事件

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警察庁は24日、同日に行った漆間巌・同庁長官の会見において、今月19日に東京都港区内で発生したパトカー強奪未遂事件について触れ、「(警察官である以上は)逃げるという考えを持つべきではなかった」と述べ、陳謝した。

22日の閣僚懇談会で小泉純一郎首相が警察官の対応に苦言を呈したことに応じたものとみられる。

問題の事件は19日午前に発生している。同日の午前9時30分ごろ、港区台場2丁目付近の国道357号線で、交差点を猛スピードで右折してきた乗用車が道路左側の歩道に乗り上げ、植え込みをなぎ倒しながら約50mを暴走。ビルの外壁に激突して小破した。

目撃者が事故発生を警察と消防に通報。現場を管轄する警視庁・東京水上署の警察官3人が現場に急行した。

ところが男は警察官の姿を目撃した途端、意味不明な言葉を叫びながら盗難防止用の金属製器具を使って車内をメチャメチャに破壊。その後に窓から車外に出て、この器具を振り回しながら警察官を追い回した。

男は警察官が逃げた隙を見て、路上に止めていたパトカーを盗難しようとしたが、エンジン音に気づいた警官がこれを阻止。男は窃盗未遂の現行犯で逮捕された。後の捜索では車内から覚せい剤(MDMA)とみられる錠剤が車内から発見されている。

この一部始終については、現場近くにあるテレビ局から緊急出動したクルーが撮影。警視庁では事件広報を一切行わなかったものの、スクープ映像として繰り返し放映した。

その映像を見た小泉首相は22日の閣僚懇談会で「警官は(容疑者を)取り押さえるためにいるのにあれは何事ですか。何のための訓練をしているんだと言いたくもなる」と村田吉隆・国家公安委員会委員長を叱責。村田委員長は「事態については調査する」として、警察庁に指示していた。

24日に開かれた警察庁の定例会見で、漆間巌・警察庁長官は「台場の現場に急行した警察官は実務経験の浅い20-24歳の警察官で、出動時の指示も交通事故の処理だった」と説明した。

漆間長官はさらに「事故処理のつもりで現場に急行したが、薬物中毒者と対峙することになって放心したようだ」と分析。その上で「警察官である以上、実務経験の有無に関わらず、逃げるという考え方を持つべきではなかった」と、その対応に不手際があったことは認めた。

また、「3人には酷な話かもしれないが、警察官は時に蛮勇を振るってでも立ち向かうべきであり、弁解の余地はない。教育指導を徹底し、このようなトラブルを繰り返さないようにしたい」として謝罪している。

ただ、今回の事件対応については「薬物中毒者という情報があれば、当初から実務経験の豊富な警察官に防靭・防弾服を着用の上で、もっと多人数で対応にあたっていた」という現場の意見もある。

首相の苦言に対して警察庁長官が頭を下げることで事態の早期収拾を図ったという見方もできるが、事件の巻き添えになった人がいなかったことは不幸中の幸いと言えるだろう。

《石田真一》

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