確かに、藤井総裁をクビにすることで小泉首相と石原国交相の株は上がった。しかし、今回は藤井氏自らがスキャンダルで自滅し、本来は味方になるはずだった国交省や道路族を敵にまわしたに過ぎず、石原国交相が道路族の反対を押し切ってクビにしたわけではない。
いわば“すでに準備はできていた”のだ。それより、道路族や国交省は民営化論議を単なる会社形態論に矮小(わいしょう)化し、本来はもっとも大事な「(建設中路線も含めた)新規建設の権限」を今までどおり維持しようと狙っている。すでに、高速道路を税金で作る「新直轄方式」も導入してしまった。
当時、反対すべき立場にいた石原氏は、国交相に就任後、「新直轄で作る道路は、有料道路ではないわけですから、その分だけ高速道路は作らないことになります」などとトンチンカンな発言をしている。
本来の民営化は、道路族と国交省が採算を度外視して際限なく道路を作り続けることに歯止めをかけるのが目的のはず。しかし、今のところ、そんな仕組みが法案に盛り込まれる気配はない。小泉政権は単に「民営化」という看板だけこだわっているが、我々納税者は、中身をしっかりと注意していきたい。