やってられない!! 太宰府市の有料駐車場税に存続の危機

自動車 社会 社会

福岡県の太宰府市が今年5月に導入した「歴史と文化の環境税」、いわゆる有料駐車場税について、付近で有料駐車場を経営する最大事業者である大宰府天満宮を含む11事業者は30日、税徴収を7月末までで中止することを明らかにした。市に対しては8月以降の税徴収中止を通告するとともに、税の凍結や廃止を求める要望書の提出も行うという。

これは太宰府天満宮を含む有料駐車場事業者で構成する「歴史と文化の環境税指定駐車場協議会」が明らかにしたもの。

太宰府市では今年5月23日から環境対策税の一種である「歴史と文化の環境税」の徴収を開始している。太宰府天満宮周辺の時間貸有料駐車場を利用する観光客などのクルマに対し、1回の利用当たり普通車で100円、29人乗り以上の大型バスで500円の税金を駐車場の利用料金に上乗せする形で徴収するというもので、「クルマを駐車する」という行為に対して課税が行われるのは全国初のケースとなっていた。

駐車料金と一緒に徴収するため、利用者にとっては税金が含まれているとは実感しにくく、短時間の駐車であるほど支払った料金内に占める税の部分が相対的に大きくなるという弊害を含んでいた。

環境対策税ではあるが、有料駐車場を利用するという行為が課税対象となるため、地元では「有料駐車場税」と揶揄されており、その適用範囲も太宰府天満宮周辺のみの駐車場に限定されることから、駐車場経営者の中からは「適用範囲外の業者に客を奪われる可能性もあり、不公平だ」という声が上がっていた。本来なら昨年10月に施行されるはずだったが、反対の意見が強く、施行がどんどんと先延ばしになり、今年5月下旬施行でようやく意見が落ち着いたという経緯もある。

しかし、施行以後も税徴収に反対する業者は後を絶たなかった。「店舗に併設された有料駐車場は税の適用対象外とする」という点を逆手に取り、有料駐車場内に地図などを販売する簡易な売店を設置。名目上は「この売店の有料駐車場」とすることで税の徴収を行わない業者が続出。利用者もトータルの利用料金が安いこうした駐車場を使うようになった。

税徴収を行っていた事業者からは「税を取っていない周辺駐車場に客を奪われている」と批判が高まり、それは市ではなく、この税の導入を最終的に決断した太宰府天満宮へ向けられることとなった。当の太宰府天満宮も有料駐車場を持ち、周辺では最大事業者であるという立場からこの問題には頭を悩ませており、対応策を模索していた。

その結果、これまで税の徴収をしていた事業者も「8月からは税金の徴収を中止する」と決断。30日にこれを公表し、2日後から早速徴収を中止するという慌しい展開となった。

もちろん市側は駐車場事業者のこうした流れには反発している。売店付随の有料駐車場とみなし、税徴収を行わなかった13事業者に対して「店舗と認定できない」と今月10日に通告。業者側はこれに対し、売店での地図販売を中止するとともに、駐車場を無料開放するなど混乱が続いている。

最大事業者であり、そこに行くために観光客のクルマが集まるという太宰府天満宮自身が税徴収に反対の意思を示したことで「歴史と文化の環境税」の継続は困難になった。

《石田真一》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

教えて!はじめてEV