名古屋市交通局の路線バス(市バス)に乗車中、運転手が急ブレーキを掛けたことで転倒し、後遺障害が残るケガを負ったのは運転手が安全運転の義務を怠ったからだとして、運転手と名古屋市を相手に総額1億1780万円の損害賠償を求めた裁判の判決が24日、名古屋地裁で行われ、裁判官は両者に対して7440万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
問題の事故は1999年7月21日に起きた。名古屋市交通局のバスが千種区豊年町付近を走行中、運転手が飛び出してきたクルマに危険を感じて急ブレーキを使用した。その際、降りるバス停が近づいたことで立ち上がろうとした当時58歳の男性客が転倒。運転席後部の鉄パイプに頭を強打した。男性は病院に運ばれたが、この事故が原因で首から下が麻痺し、日常生活に介助を必要とするほどの後遺障害を負った。
このため、男性は「事故の原因は運転手が安全運転義務を怠ったことにある」として、名古屋市と運転手を相手に総額1億1780万円の損害賠償を求め、名古屋地裁に提訴していた。これに対して被告の両者は「予告なしに急ブレーキを扱った」という点については過失を認めたが、被害者が事故直前に飲酒をしている点や、手すりやつり革使っていなかったことは過失に当たると主張してきた。
24日の判決で名古屋地裁の渡辺修明裁判長は被告側の主張を認め、被害者側にも一定の過失が存在することを認めた。しかし、「その過失は運転手の過失と比較した場合には軽微である」として、名古屋市と運転手に対して総額7440万円を支払うように命じる判決を言い渡した。