状況は事故なのに、「事故じゃない」とする警官2人の主張は認めないと審査会

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1997年7月、横浜市保土ケ谷区の市道で交通事故を起こした同市泉区在住の男性が死亡したのは、近隣住民からの通報を受けて駆けつけた神奈川県警・保土ヶ谷署員に「事故ではない」と放置されたためとして、遺族が事故処理をせずに被害者を放置した署員2人を保護責任者遺棄致死容疑で横浜地検に告訴し、同地検が不起訴とした処分について、横浜検察審査会は24日までに不起訴不当とする議決を行ったことを明らかにした。

この事故は1997年7月19日の午前0時ごろに発生している。横浜市保土ヶ谷区内の路上で、同市泉区に住む当時54歳の男性が運転する大型のRV車が道路脇の支柱に激突した。男性は衝突の弾みで気を失ったが、事故発生当時の激突音を聞いた付近の住民から「大きな衝突音がした。事故らしい」との通報が神奈川県警に寄せられた。

担当する保土ヶ谷署は地域課の署員3人を現地に急行させたが、RV車が電柱に衝突し、フロントガラスや前輪が破損している状況を確認しながら、運転席で倒れている男性は「酔って寝ているだけ」と判断。クルマを他車の通行の支障にならない路肩に移動し、男性をそのまま車内に置いた状態で現場を離れた。数時間後、別の住民が「事故を起こしたらしきクルマが止まっていて、中に男の人が倒れている」という119番通報を行い、救急車で病院に収容されたが、10時間後に死亡した。

死亡した男性の遺族2人は「駆けつけた警察官が事故と認識し、早期に病院に収容すれば助かったかもしれない」として、事故車を移動させた署員2人を保護責任者遺棄致死容疑で横浜地検に告訴した。署員は取り調べの際に「救護しなければ危険が生じるという状況ではなかった」と主張。地検もこの主張を受け入れて不起訴としたが、これに反発する遺族が検察審査会に対して異議を申し立てていた。

横浜検察審査会は当時の資料などを元に検討を行ったが、「事故を起こしたクルマのフロントガラスや左前輪のタイヤは破損していた」、「車内に倒れていた男性に声を掛けても反応がない(つまりは意識不明だった)」、「事故車がハザードランプを付けた状態で現場に止まっていた」という3点については署員2名が確認していることを指摘。これらの状況から「問題のクルマは現場で事故を起こし、運転者は意識不明の状態であることの認識は不可能ではなかった」と指摘した。また、運転者からはアルコールが検出されていないにも関わらず「車内から酒のようなにおいがした」と主張、それを理由に「酔って寝ている」とした判断には明らかな誤りがあるとも指摘した。

その上で「現場の実況見分などをせずにクルマを移動するという行為は極めて不適切」と認定。「事故や犯罪処理の基本を怠っている」として不起訴不当の評決を議決した。

《石田真一》

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