トヨタ『センチュリーCNG』が中央省庁での使用を前提としたものなら、スバル『レガシィB4 CNG』は地方自治体での使用を第一に考えたクルマだ。こだわりを忘れないメーカーだけに、このクルマでもいろいろな技術を追求している。
今回展示されたクルマに搭載されたエンジンは、市販車と同じ2.0リットルDOHC水平対向4気筒タイプをベースに、可変吸気バルブ機構やEGR(排気ガス再循環装置)を廃止する一方、CNG専用の電子制御式インジェクターなどを付加している。言うなれば市販エンジンとの相違点はそれだけで、比較的安価に改造できるようだ。
スバル技術本部・パワーユニット研究実験第一部の秋本晃主査によると、CNG用エンジン開発を行う中で一番苦労した「吸気量の確保だった」という。ガソリンの場合は液体を気化させることで混合気を作り出すが、天然ガス(CNG)は気体であるため、燃料を優先すると全体の空気流入量が減らされてしまう。
そのために開発当初は充分なパワーを出せないこともあったそうだ。まずはこの点の克服に主眼を置き、適切なタイミングで燃料を注入するというインジェクターの開発に成功したことで94kW/6000rpm、160Nm/4400rpmのパワーを維持することに成功した。ガソリンタイプが114kW/6400rpm、196Nm/3200rpmであることを考慮するなら、遜色のない数値だと言えるだろう。
秋から群馬県太田市などを中心に10台を導入し、実証実験を行うことになるが、それは今回展示されたモデルをさらにリファインしたものになるとしている。現在は航続距離を伸ばすため大型のタンクを搭載。その分ラゲッジスペースが犠牲とされてしまったが、隣に展示されていたトヨタ『センチュリーCNG』を目前にして、戦闘意欲(?)に火がついてしまったようで「ゴルフバッグはともかく、A4サイズのパンレットを収めたダンボールぐらいは入るようにしなきゃいけませんね」と語る秋本主査。秋までにはスバルのこだわりを最大限に表現したクルマが登場するかもしれない。