もともとツーリングカーレースのベース車両として、'86年に登場したBMW『M3』。'93年登場の2代目では単なる競技車のベースではなく、ロードゴーイングモデルへと成長を果たす。そして、現行モデルの3代目は、最高出力が343psにアップするなど磨きがかけられ、2000年にデビューした。
そんなM3には、先代モデルから『SMG』というギアボックスがラインナップされていた。SMGは、MTと同じ構造ながら「クラッチを切ってギアチェンジし、クラッチをつなぐ」という一連の動作を、すべてコンピューターと油圧で行なう。そのためクラッチペダルがない。その気になれば、一般的なATのようにラクチンな運転も許される。
つまり面倒なクラッチ操作をなくしたことで、AT免許でも運転できるのだ。もちろん、各種安全装備があるとはいえ、ただ運転できるのと速く走らせられるのとでは別の話だが……。
そのSMGが『SMGII』に進化し、現行モデルに追加設定された。新型では、変速時のタイムラグが大きく、ドライバビリティーを損ねる部分が大幅に改善。さらに、ギアレバーだけでなく、ハンドル裏にF1マシンのようなパドルも追加された。右を引くとシフトアップ、左でダウンとなる。
いままでスーパースポーツカーはMTが主流だったが、BMWはSMG投入でターゲット層を広げた。今回の第2世代SMGでは、MTを操る玄人でも満足できる仕上がりを達成したのである。
《河口まなぶ》