世界的な電動化傾向で注目されるのは、eアクスルの構成をどうするか、EVの800V化は進むのか、シリコンのIGBTは不要になるのか、SDV時代の電装品は48V化されるのか、といった点だ。
これらの議論は既存技術の課題と新技術のメリットに目が行き、既存技術のメリット、新技術の課題が忘れられがちになる。しかし、現在の技術も新しい技術も、それが最終形と捉えるべきではない。要件ごとにどれが最適なのかが変わるものだ。そう指摘するのは、森本雅之氏(Mori MotoR Lab. 代表 元東海大学教授 工学博士 電気学会フェロー)だ。
森本氏はレスポンスセミナー「自動車パワーエレクトロニクスの進化と今後の方向性~次世代電動パワートレーンはどこへ向かうのか~」で、この点について講演する。
本稿では、セミナーに先立ち、電動パワートレーンを考えるうえで重要となる、モーター出力、高電圧化、SiC、48V技術などを整理した。
EV・HEVをどう捉えるか――「車両方式」よりも「モーター出力」で見る
森本氏は、まず「パワートレーン」という言葉そのものを整理するところから話を始める。パワートレーンとは本来、「動力を発生させ、それを駆動輪に伝達する装置」であり、エンジン車であればエンジン+トランスミッション、電動車であればインバーター+モーター+ギアで構成されるユニットとなる。この定義だと電動パワートレーンはeアクスルと言い換えることもできる。
一方で、電動車という枠組みにはHEV、PHEV、BEV、FCEVなどが含まれる。どれもモーターがかかわる点では電動車と言えるが、HEVには、マイルド、ストロング、プラグインといった区別の他、シリーズ、パラレル、シリーズパラレルといった機構からの分類も存在する。
これらの分類はマーケティングの思惑や法区分・統計処理の問題もあり、すっきりしない。森本氏も、「機構上の分類は、パワーエレクトロニクスやモーター技術を考えるには向いていない。ポイントは、モーターでどのように駆動するのか、そのためには何kW必要なのか、という出力の視点だ。」と述べる。
モーターの役割で電動車を分類
森本氏は、電動車について次の分類を唱える。
マイクロHEV:出力5~10kW
モーターはエンジンのアシスト(回生を含む)のみ。軽自動車など
マイルドHEV:出力20~30kW
エンジン走行が基本で、モーターでアシスト。特定条件のみモーター走行
ストロングHEV:50~60kW
モーター走行が基本で、アシストも行う。エンジン単独走行も可能
BEV・FCEV:出力80~150kW
発電機・燃料電池の有無にかかわらずモーター単独走行のみ
スポーツBEV:出力200kW
BEVのうち加速性能に特化した車両

エンジン(発電機)を搭載するが、モーターのみで走行するシリーズハイブリッド(e-Power)は、この分類ではBEVに含まれる。
なぜモーターの出力で分類するのか。パワーエレクトロニクス、モーター技術の視点では、モーターの出力によって、技術レベルが全く異なるものになるからだ。5kWのモーターと100kWのモーターでは、サイズだけでなく、駆動制御回路、冷却システム、実装などの要件が大きく異なる。
アプリケーション戦略と整合するパワーエレクトロニクス視点
ビジネス的にはバッテリー性能やコストが車両の価値や戦略を決めると言われている。また、分類上プラグイン機能(外部充電)の有無が税制や補助金区分に使われる。環境規制や法規制を満たす必要もある。その結果、EVもICE(ガソリン・ディーゼル)も、余分な機構やシステムを詰め込むことになる。要件が多岐にわたると、戦略的な投資にも影響がでる。

しかし、パワーエレクトロニクス視点の分類は、その整理に役立つ。
たとえば、1トン前後の車両を時速70kmで平地走行させるのに必要なモーター出力はせいぜい10kW程度で済む。それ以上の出力が必要なのは加速時だ。ハイブリッド車でも、バッテリー走行主体で行きたいのか、エンジンのモーターアシストを低速に限定するのか、加速時のアシストが主体なのか。これらによって必要なモーター出力は変わってくる。

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