日産自動車は7月16日、新型『エルグランド』を発売した。4代目となる新型は16年ぶりのフルモデルチェンジで、第3世代「e-POWER」や電動駆動4輪制御技術「e-4ORCE」などを採用した。
エルグランドは1997年に初代が登場した。新型では「リミットレスグランドツアラー」をコンセプトに掲げ、長距離を移動しても乗員全員が快適に過ごせるプレミアムミニバンをめざした。
◆「リミットレスグランドツアラー」とは
商品企画を担当したチーフプロダクトスペシャリストの中村智志氏は、グランドツアラーについて「長距離を快適に過ごせる車という意味」と説明。「500km先、600km先まで、ご家族や親しい友人の方とドライブに出かけられて、行った先で『こんな快適な車はない、もっと乗っていたい』と感じていただける」車をめざしたと語った。
日産は新型エルグランドを今後の成長をけん引する重要モデルと位置付ける。杉本全執行職は「それは単に販売台数を示しているわけではありません」とした上で、「この車を通じてお客様に、どのような体験や価値をお届けしたいのか、その第一歩を示すモデル」と説明した。

◆第3世代e-POWERとe-4ORCE、3技術を初めて組み合わせ
パワートレインには第3世代e-POWERを採用した。発電用エンジンを新開発するとともに、5つのパワートレインユニットを1つの筐体にまとめた「5-in-1」により効率を高め、モーター駆動による滑らかな走りと静粛性を追求した。
これにe-4ORCEと「インテリジェントダイナミクスサスペンション」を組み合わせる。e-4ORCEは加減速時の車体の動きを抑え、乗員がよりフラットに過ごせるようチューニング。電子制御サスペンションは路面に応じて減衰力を変化させる。
チーフビークルエンジニアの一野健人氏によると、この3つの技術を組み合わせるのは「日産初」で、新型エルグランドのために採用したものだという。
走行モードはスタンダード、スポーツ、コンフォート、エコ、スノー、パーソナルの6種類。一野氏は「モーターの力、4輪の駆動力配分、サスペンションの動き。それらを同時に、そして緻密にコントロールすることで、新型エルグランドはこれまでのミニバンとは別次元の走りを実現します」と語った。
ブレーキ制御にも手を加えた。停止直前にドライバーがブレーキを緩めるような操作を車両側で制御し、停止時の前後方向の揺れを抑える。走り始めから停止まで滑らかな動きをめざした。
開発では長距離走行も重視した。一野氏によると、厚木の日産テクニカルセンターから徳島まで約8時間を走る長距離テストも実施。「疲労がないどころか、もっと遠くに行きたい、もっと運転したい、乗っていたいと、試乗したメンバー全員が強く感じました」と振り返った。

◆「組子」に着想、27インチ相当ディスプレイ採用
エクステリアは、リニアモーターカーをテーマに疾走感とフラッグシップらしい存在感の両立を図った。フロントグリルのパターンは日本の伝統工芸「組子」から着想。ボディからフロントグリル、ヘッドランプのシグネチャーまで連続感を持たせた。
一野氏はフロントの造形について、グリルのドットは「一つとして同じ大きさのものがない」と説明。面の傾きだけでなく、角の丸みや突出量までミリ単位で調整した。「大きく迫力のある顔でありながら、ただ威圧するのではなく、静かで知的な威厳を感じさせることにこだわっています」とした。
サイドは直線的なウエストラインやルーフ、キャラクターラインによって疾走感を表現。リアエンドを「くの字」に切り込んだ形状は、風洞実験を重ねて空力性能にも配慮した。
ボディカラーには、富士山に朝日が昇る夜明けの自然美を表現した「フジドーン」を設定。ウエストラインから上には紫がかった黒の「至極(シゴク)」を組み合わせる。塗り分けには手間をかけ、九州工場の塗装ラインを3回通す工程とした。

インテリアは運転のしやすさと上質感を追求した。運転席ではボンネットの見え方や死角の少なさに配慮し、大型ミニバンでも車両感覚をつかみやすくした。インパネには27インチ相当の大画面ディスプレイを配置。木目調パネルなどを組み合わせた。
◆2列目は幅50cm、3列目まで快適性を追求
2列目シートは、柔らかさだけでなく、カーブや段差でも姿勢が崩れにくく、長距離移動で疲れにくいことを重視した。クッション材をミリ単位で調整し、シート幅は50cmを確保。デュアルリクライニング機構も採用した。3列目についても、ゆったり座れる空間をめざした。
中村氏は「新型エルグランドのシートは、目的地まで我慢するための席ではなく、移動そのものを楽しめるラウンジシートとして作り込まれています」と説明。試作車による長距離テストでは、3列目を嫌がるのではなく「では私が3列目で」という会話が出るほどだったという。
静粛性では、エンジンノイズやロードノイズにキャンセル音を重ねて低減するアクティブノイズコントロールを採用。着座位置を検知し、必要な席にキャンセル音を集中させるゾーンコントロールも新採用した。高性能遮音ガラスや高剛性ボディ、遮音材、第3世代e-POWERも組み合わせた。

発売記念イベントでは、日産ブランドアンバサダーの俳優、鈴木亮平氏が新型エルグランドを試乗した動画が上映された。鈴木氏は「加速がスムーズですね。しかもすごく静か」と話し、後席では「ラウンジにいるみたいな感じがありますよ」と評価した。試乗後には「運転しても楽しいし、後ろに乗っていても快適」と感想を述べた。
開発を率いた一野氏は「従来のどのミニバンとも一線を画す、プレミアムグランドツーリングミニバンです」と強調。中村氏も「運転席に乗っていてもそうですし、後席に乗っていただいても」ワクワクを感じられる車に仕上げたと語った。
日産は新型エルグランドの発売に合わせ、新たなブランドメッセージ「らしく走れ、日産」を発表した。杉本執行職は、新型エルグランドについて「この新しいブランドメッセージを体現するモデル」と位置付けている。
【全文PDFプレカン】新型エルグランド 発売記念イベント
以下の全文PDFは、記者会見やイベント講演の取材音声をもとに文字起こしを行い、編集者が確認と修正を入れたドキュメントです。
●登壇者
杉本全(日産自動車執行職)
鈴木亮平(俳優)
一野健人(日産自動車チーフビークルエンジニア)
中村智志(日産自動車チーフプロダクトスペシャリスト)
●目次
オープニング・イベント概要説明 1:18 p.4
本日のプログラム紹介 1:43 p.4
日産ブランドメッセージ「らしく走れ、日産」発表(杉本執行役プレゼンテーション) 3:03 p.5
新型エルグランドのコンセプトと電動化技術の紹介 6:40 p.6
ブランドアンバサダー鈴木亮平による試乗ムービー 10:15 p.8
開発者トークセッション開始・エルグランドの歴史と新型の位置づけ 12:26 p.9
エクステリアデザインのこだわり(フロント・サイド・ボディカラー) 15:54 p.11
インテリア・運転席の設計思想 25:21 p.14
走行性能・電動化技術(e-POWER/e-4ORCE)の詳細 28:27 p.15
後席シートの快適性へのこだわり 35:35 p.17
静粛性技術(アクティブノイズコントロール・遮音ガラス)の解説 39:19 p.19
開発チームからのメッセージと締めくくり 47:13 p.20
展示イベント・試乗情報の告知とクロージング 49:56 p.22
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