恒例の怪談シリーズです。運転中、不用意に横を向かないでください。。。
ある夏の夜のこと。地方都市で営業職をしているAさんは、仕事帰りに郊外のバイパスを車で走っていた。時刻は午後10時を過ぎており、街灯も少なく、周囲には人の気配がない。
エアコンの効いた車内。ラジオも消して、ただ道路の音だけが静かに響いていた。スピードは60km/hぐらい。ふと、Aさんは違和感を覚える。視界の隅に何かが……。誰かが車と並走している?
助手席側に目をやると、窓の外にいたのは白髪の老婆だった!
痩せこけた体、白い着物。地面を踏んでいる様子はない。が、車と同じスピードで走っていた。目がギョロリと大きく見開かれ、口は何かを叫んでいるようにパクパクと動いていた。
思わず目をそらしたAさんは、パニックになりながらアクセルを踏んだ。70km/h、80km/h、それでも窓の外に老婆の顔があった。
赤信号で我に帰り、急ブレーキで止まると、老婆の姿はすっと消えた。助手席の窓に、白く濁った手形が、ベタリと残っていた。
それ以来、Aさんは夜道を一人で運転できなくなったという。二人で乗っていても、助手席の人が白髪の老婆に変身しそうで、気が気でならない。