高速道路直上70mの岩塊、異例の掘削作業…上信越道・北野牧工事の見学

上信越道・北野牧工事
  • 上信越道・北野牧工事
  • 過去の現場公開や現場見学の過去の現場公開や現場見学の様子
  • 長野側からの施工状況
  • 高崎側からの施工状況
  • 工事の状況:2024年3月
  • 工事の状況:2024年5月
  • 概略施工現場。地理院地図をもとに東日本高速道路(株)が加工

高速道路の直上に位置する高さ70mの岩山を撤去する! その工事現場を見学するツアーが企画されました。現場公開では、掘削現場や、巨大なクレーンなどの重機を見学、工事用モノレールへの乗車もできます。

●高さ70mの岩塊を撤去する

NEXCO東日本は、2025年7月18日に催行する、ドラぷらの旅「北野牧工事インフラツアー」を販売中です。北野牧工事とは、高速道路の上信越自動車道の北野牧トンネル上部に位置する高さ約70mにおよぶ岩塊を撤去する工事です。施工は大林建設で、直下を走る高速道路に一切の影響を与えず、安全と信頼性を確保する取り組みは、世界的にも前例のない挑戦となっています。

北野牧工事は着々と進んでおり、“岩塊ツアー”は今しか体験することができません。ツアーの開催は今回が3度目となります。

●岩山が崩壊の恐れ

北野牧トンネルは長さ190m、松井田妙義IC~碓氷軽井沢IC間の群馬県松井田町にあります。長野側坑口上には高さ約70m(当初の高さ)、平均傾斜角70度の岩塊が存在し、崩壊・落石の危険があります。北野牧工事は岩塊の約9万5000立方メートルを掘削し除去する、抜本的な落石対策工事です。

長野側からの施工状況長野側からの施工状況

工事は2017年に開始し、掘削を行なうための運搬路として仮桟橋、ダンプトラック2台が一度に乗車できるインクライン(エレベーター)、掘削時の安全対策として高速道路上のロックシェッド(仮設の屋根)、岩塊からの落石を防止するために打設するロックボルト(鉄筋)などを設置・施工しました。2023年5月より本格的に掘削を開始し、全ての工事が完了するのは2029年を予定しています。


ツアーは日帰りで、2025年7月18日の午前と午後に1回ずつ開催、集合・解散場所は荻野屋横川店(群馬県松井田町)です。料金は1万2000円、予約申し込みはNEXCO東日本「ドラぷらの旅」サイトから。

●工事は2段階に分かれる

北野牧工事の施工を担当するのは大林建設です。工事は2段階に分かれており、2017年から2023年までは仮設備構築と落石対策を行なう「その1工事」を実施。2023年2月より、本格的な掘削作業となる「その2工事」に着手しました。

この工事の背景には、1996年に北海道の豊浜トンネルで発生した落石(崩落)事故があります。この教訓をもとに全国で坑口斜面の点検が実施され、北野牧トンネル直上でもモニタリングが継続されてきました。グラウンドアンカーの緊張力に増加が見られたことを受け、NEXCO東日本は、岩盤除去の予防工事を決定しました。

●85パターンの案を比較検討した

大林建設では施工計画の検討に2年を要し、85パターンの案を比較検討。その中から、安全性・工期短縮・環境への配慮を両立した計画が策定され、2017年に準備工事が始まりました。

準備工事では、多重の落石対策が施されました。崖面にロックボルトと高強度金網を設置し、トンネル坑口上部にはロックシェッド(防護屋根)を架設。さらに70mの崖面を防護柵で覆い、安全を確保しています。また、掘削や資材搬出のために仮桟橋やインクライン、モノレールといった大規模な仮設備も構築されました。桟橋は東京側で500m、長野側で100m、モノレールは総延長410m・最大勾配38度と、いずれも環境負荷を最小限に抑える設計がなされています。

掘削作業は2023年3月から開始されました。硬い安山岩から成る断崖を、発破を使わず油圧割岩機とブレーカーによって砕いていきます。掘削は1.3mごとのベンチカット工法で進められています。2025年8月末現在、掘削は10mまで完了。今後は複数の重機を同時に稼働させることで作業効率を高め、2029年春の完工をめざします。

《高木啓》

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