事業者向けEV試乗会「SMAS e-PARK」で企業のカーボンニュートラルに対する取り組みを支援…住友三井オートサービス

事業者向けEV試乗会「SMAS e-PARK 横浜」
  • 事業者向けEV試乗会「SMAS e-PARK 横浜」
  • 日産『サクラ』
  • 三菱『ミニキャブEV』
  • ヒョンデ『アイオニック5』
  • ホンダ『N-VAN e:』
  • スバル『ソルテラ』
  • 事業者向けEV試乗会「SMAS e-PARK 横浜」
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ドライバーや消費者向けのEV試乗会は各メーカー、各所で行われているが、事業者向けの試乗会は珍しい。住友三井オートサービス(SMAS)は、2023年から企業向けのEV試乗会を各地で行っている。その内容やねらいを取材した。


試乗車は6台、車両展示やセミナーも

本イベントは神奈川県横浜市内の自動車教習所を借り切って行われたものだ。教習コースの内周部分は供覧エリアとして、ディーラーや販売店が持ち込んだEV、電動バイク、トラックなどが展示される。試乗車は、同じくディーラーなどが用意した車両を使い、外周コースで加速・ブレーキ、坂の上り下り、スラロームなどを試す。

試乗以外に、教室を使ったセミナーも開催される。EVの普及状況や導入の課題とその対策、ソリューションなどが紹介された。

用意された試乗車は以下の6台。

・三菱『ミニキャブEV』
・ホンダ『N-VAN e:』
・N-VAN(比較のためのガソリン車)
・日産『サクラ』
・スバル『ソルテラ』
・ヒョンデ『アイオニック5』

事業者向けEV試乗会「SMAS e-PARK 横浜」

供覧エリアには、日産『アリア NISMO』、ソルテラ、ヒョンデ『インスター』のほか、EVトラックの三菱ふそう『eキャンター』が展示されており、担当者が参加者の質問に応じていた。インスターは1月にヒョンデが日本発売を発表したばかりのコンパクトEVだ。eキャンターは、このイベントに初めて持ち込まれた。インスターは軽自動車より少し大きいサイズで、搭載バッテリーの容量が49kWhと他の軽EVの2倍以上ある。eキャンターは、普通免許から中型免許までのボディサイズをラインナップし、パッカーや保冷車などにも対応する。

ヒョンデ『インスター』
三菱ふそう『eキャンター』

EVバイクは『ベンリィe:』『ジャイロキャノピーe:』『SWING SPORTS』が展示された。ベンリィe:とジャイロキャノピーe:はホンダが提供する交換型のバッテリーモジュール(モバイルパワーパック)を利用する。ジャイロキャノピーe:は出前などによく利用される3輪タイプ。SWING SPORTSは神奈川県内のベンチャー企業が開発・販売している前2輪・後1輪の3輪バイクだ。

注目される商用車としてのEV

SMAS e-PARKには、日産、三菱自動車、ホンダ、スバルのほか、テスラ、BYD、ヒョンデ、フォロフライなどの主要OEM、さらにパナソニックオートモーティブなどサプライヤーや商社なども協賛企業に名を連ねている。愛知県や岡山県など自治体も後押しするなど、イベントの主旨に賛同する企業も少なくない。

供覧エリアでは、ディーラーやメーカーの法人営業担当者が、参加者の質問や疑問に答えていた。日産はサクラを試乗車として出していたが、供覧エリアにはアリア NISMOが展示され、V2Lの外部給電器を接続し電子レンジや電熱器などを動かしていた。アリアを社用車にしている会社はあるのか? と聞いてみたところ役員の車両や社長の車として実績があるそうだ。

ヒョンデのアイオニック5はタクシー事業者が採用している。ソルテラもタクシーや役員の車両としてのニーズがあるという。

日産『アリア NISMO』

参加者には事業者目線でEVをチェック、乗り比べできる点が評価されていた。浜銀ファイナンス 営業企画部の宮﨑勝蔵 副部長は、「EVを運転するのは初めてではありませんが、商用車やガソリン車を含めて比較試乗ができる機会はあまりないので参加しました。我々リース会社ということで法人のお客様が中心なので、日々の業務での使い勝手や内装などを確認しながら試乗しました。スマホやノートパソコンなどをどのように充電できるかといった部分もよく見えて良かったです。ガソリン車から乗り換えていただいても全然問題なさそうですし、逆にEVならではの利便性もありそうだという印象を持ちました。停車時や加速時も静かでドライバーに優しく、N-VAN e:などは営業車や物流の環境として良いと感じます」という。

また、「カーボンニュートラルへの関心というのはどの企業も非常に高く、その対応策の一つとしてEVが重要だという認識はあるけれど、具体的にEVを入れるとか活用を広げていくことに対しては、まだ物理的にも心理的にもハードルが高いのではないかなと。ただ今日のセミナーでもありましたが、課題に対して1つ1つ丁寧にアプローチしていけば、十分運用で解決可能という印象を持っています」と語った。

なぜ事業者向けの試乗会を企画したのか

SMAS e-PARKは2024年度、富山、福岡、東京、札幌、栃木、大阪と日本各地で開催された。今回取材した横浜が今年度最後となる7回目のイベントだそうだ。なぜSMASは事業者向けのEV試乗会・セミナーを開催するのか? 住友三井オートサービス 常務執行役員の福間晃氏に話を聞いた。

住友三井オートサービス 常務執行役員の福間晃氏

まず、参加企業の業種は多様だという。営業まわりや配達などの業務で車を使う会社、交通事業者、自治体など、どの業界の参加が多いといった特徴はない。ただし、参加者の部署・職種には特徴がある。総務部や調達関連で決裁権を持つ人たちが対象となる。

「維持費がかからない傾向にあるEVは、純粋にコストダウンにもなります。脱炭素やカーボンニュートラルの対策にも有効です。業務でのEV利用は、カーボンニュートラルへの取り組みと評価され、多くの企業にとって融資・入札の加点ポイントにも成り得ます。また、外資系企業やグローバル企業との取引条件には、企業活動全般でのカーボンフットプリントの規定が設けられることもあります」

福間氏が言うように、多くの企業担当者が再エネやEV(を含む電動車)導入に興味を持っている。しかし、業務利用となると、充電インフラや航続距離への課題がある。

「とくに事業者への導入の場合、駐車場がビルの地下だったり、機械式駐車場だったりします。充電器の設置は不可能ではありませんが、平場よりコストがかかります。複数台を所有する場合、充電器のポートを単に増やすだけでなく、車両ごとに充電スケジュールや出力を調整するといったエネルギーマネジメントのソリューションも重要。車両の稼働状況や運行管理を含めた計画が必要です。セミナーでは、そのような問題の参考になる情報提供や設備投資に使える補助金などの情報を案内しています」


《中尾真二》

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