「DS」がブランド誕生70周年、初代『DS 19』の誕生ストーリー

DS 19(1960年)
  • DS 19(1960年)
  • DS 19(1959年)
  • DS 19(1959年)
  • DS 19(1955年のパリモーターショー)

DSオートモビルは、2025年にブランド誕生70周年を迎えると発表した。1955年に登場した『DS』から始まるこのブランドの軌跡は、単なる自動車以上の存在として、フランス車の象徴となってきたという。

DSの開発は1938年、当時のシトロエンのピエール・ブーランジェ社長によって始まった。その後、後任のピエール・ベルコが引き継ぎ、17年の歳月を経て1955年10月、ついに『DS 19』として世に送り出された。

DS 19(1955年のパリモーターショー)DS 19(1955年のパリモーターショー)

開発には3人のキーパーソンが関わった。航空工学出身のアンドレ・ルフェーブルは、前輪駆動や空力設計、軽量化、重心の集中を追求。独学のエンジニア、ポール・マジェスは革新的な油圧システムを開発し、有名なハイドロニューマチックサスペンションや油圧式ステアリング、クラッチ、ブレーキシステムを生み出した。そして、才能あるスタイリストで彫刻家でもあるフラミニオ・ベルトーニが、革新的で優雅なデザインを手がけた。

1955年10月6日、パリモーターショーでDS 19がデビューを飾る。グラン・パレの荘厳なドーム天井の下、秘密裏に開発されてきたこの車の登場は、驚きと賞賛を巻き起こした。その前衛的かつ優雅なラインは、瞬く間に新たな基準となった。来場者やジャーナリストは文字通り魅了され、競合他社も新参者の天才的な出来栄えに拍手を送った。初日だけで1万2000台のDS 19が売れ、10日間のショー終了時には8万台もの受注があったという。

DSの生産は1955年10月7日、パリのジャヴェル河岸の工場で始まった。道路に現れた最初のモデルは、その革新的な外観で人々の注目を集めた。DSは単なる自動車の彫刻にとどまらず、先進技術の結晶でもあった。例えば、画期的なハイドロニューマチックサスペンションは、かつてない路面追従性と乗り心地を実現。また、新しい安全機能として、強力な油圧式ブレーキシステムと前輪ディスクブレーキを採用し、その短い制動距離は、経験豊富なドライバーでさえ驚かせるほどだったという。

DS 19(1959年)DS 19(1959年)

DSは1950年代を通じて進化を続け、1956年10月には『ID 19』が登場。1958年にはエステート、ファミリー、商用バージョンが発売され、同時に『DS 19プレステージ』も登場した。1958年にはボディカラーの選択肢が4色から8色に拡大。1959年には最初のスタイリングアップデートが行われ、リアフェンダーの延長やフロントフェンダーへの大型エアベントの追加などが施された。

DSは当初から国際的な展開を見せ、1956年には英国とベルギーで、1959年には南アフリカで組み立てが始まった。フランスの優雅さと前衛性の象徴として、西ヨーロッパ全域、カナダやオーストラリアを含むほぼ全ての英連邦国、そして熱狂的なファンを獲得したアメリカにも輸出されている。

《森脇稔》

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