SDV時代の自動車関連企業にはどんな考え方が必要か…Bashow 程塚正史 代表取締役[インタビュー]

SDV時代の自動車関連企業にはどんな考え方が必要か…Bashow 程塚正史 代表取締役[インタビュー]
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来たる10月29日、オンラインセミナー「車載アプリが創る2030年の移動文化~先例づくりを進めるスタートアップの事例とともに~」が開催される。セミナーに登壇するのは、株式会社Bashow 代表取締役 程塚正史 氏。

今回のセミナーは以下のテーマで進められる。

1.SDVによる抜本的な変化
2.2030年前後の車載アプリ市場
3.基盤システム構築に向けての初手事例(Bashow社の取組み紹介)
4.デジタルコンテンツによる移動体験の付加価値向上
5.質疑応答

講演の後には、参加者からの質疑応答の時間が用意されている。

セミナーの見どころを程塚氏に聞いた。


ソフトウェアシフト、SDVの時代と言われるなか、自動車業界はこれまでの考え方を変えなければならない節目に立っている。各社は具体的になにをすればいいのか。新事業のヒントはどこにあるのか。大変革の只中である今、多くの人が解を模索している。

SDVについての総論的な説明や分析はときおり見られる。だが、各社がとるべき実際のアクションは事業内容や得意分野によって様々で、とがった動きが参考になるかもしれない。ここでは、AIを活用した車載コンテンツの基盤システム構築を進めるスタートアップの創業者に話を聞く。

創業者は、長年シンクタンクで自動車産業の方向性に関して調査・分析を行ってきた程塚正史氏(株式会社Bashow 代表取締役)。シンクタンクでの研究成果を踏まえて創業したという。元研究員の経営者として、今後の自動車市場をどのように見ているのか。各社戦略の参考になればとインタビューした。

車両の空間コンピュータ化が進む

---:さっそくですがSDV時代の自動車産業について、どのような見方をしているのでしょうか。

程塚正史氏(以下敬称略):2010年代の半ばにCASE革命と言われるようになる前から、クルマには多くのセンサ、プロセッサ、HMI(Human Machine Interface)機器が搭載され始めています。そしてこの傾向はますます進みそうです。さらにクラウド連携が強化されることで、クルマの「空間コンピュータ化」が進むと見ています。

---:空間コンピュータ化とはどういうことですか。

程塚:データの入力、出力がともに三次元という趣旨です。パソコンやスマホは二次元ですよね。キーボードやタッチパネルで入力し、出力は基本的に平たいディスプレイに表示されます。一方でクルマは、ここでは空間コンピュータになる自動車をクルマと呼びたいと思いますが、入力されるデータは車室の内外の空間全体をセンシングして取得できます。自動運転の関係で車外に向けてはLiDAR含めてセンサが搭載され、車室内にもDMSのカメラやバイタルセンサが搭載されつつあります。これらのデータを自動運転システム以外にも使えるとの議論が本格化するのは自然の流れです。出力も、車載ディスプレイや従来型のオーディオだけでなく、車窓への映像表示や三次元音響、フレグランスなど空間全体を演出するものになります。

ECUの統合やビークルOSの整備もクルマの空間コンピュータ化に重要な変化です。クラウドにつながって、外部の情報が使えるようになるのはもちろんですし、もともとクルマに載っていなかった機能を、利用者がクルマ自体を購入後にアプリとしてインストールする動きも加速するでしょう。

そのとき、安全性や走行性能のように従来から自動車が持っている機能は、ご関係者には失礼ながら性能限界に陥りやすい一方で、IVI領域にはまだまだ可能性があります。クルマならではの車載アプリなどありえるのか? という疑問をよく聞きますが、あると思います。経産省・国交省の「モビリティDX戦略」では「新たな機能・サービス」と呼ばれていますが、それらは車載アプリによって実現されると見て間違いないのではないでしょうか。なぜなら、OEM自らが多様な利用者のニーズに適した機能をあらかじめすべてセットしておくのは不可能だからです。

車載アプリの鍵はソフトウェアプラットフォーム

---:車両の構成要素のうち、ソフトウェアがコスト的にも占める割合が増えると言われていますね。その中でも車載アプリがSDV市場の鍵でしょうか。


《中尾真二》

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