パナHD楠見CEO、車載電池は「投資の時期や額を市場や顧客の動向に合わせて柔軟に」

パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEO
  • パナソニックホールディングスの楠見雄規グループCEO
  • 円筒形車載電池 左から1865、2170、4680

パナソニックホールディングス(HD)の楠見雄規グループCEOは5月17日、経営方針説明会を開催。車載電池事業が目標が未達になったため、「期待に応えられなかった」と陳謝し、グループ全体で収益改善に向けた改革を実行する考えを示した。


◆バッテリーEV市場が変化した理由

「この1年で、グローバルでのバッテリーEV市場が大きく変化した。当社が注力している北米市場は、HEV(ハイブリッド車)に大きく舵を切ったカーメーカーが出てきて、バッテリーEVの加速度が小さくなっている」と楠見CEOは話し、その理由を3つ挙げた。

その3つとは、車両コストの大きな割合を占めるバッテリーコストが普及価格帯のクルマに見合うレベルで実現できたいないこと、充電ステーションの整備が追いついていないこと、米国環境保護庁が2032年までの温室効果ガス排出基準を緩和してプラグインハイブリッド車など多様な技術でCO2削減を達成するシナリオを発表したことである。

「戦略的パートナーに出している電池の需要が急減したので、米国に行ってその会社の社長に確認したら、こういう理由でこの車種は今あまり売りたくない状況にあるというようなことを言っていた」と楠見CEOは打ち明け、テスラの方針転換は予想外のことだったようだ。

◆車載電池が成長領域

結局、日本で生産してテスラに納めている電池の量が大きく減ったため、2023年度は前の期の107億円の黒字から187億円の赤字に転落してしまった。しかし、長期的に見れば、バッテリーEVが普及していくのは間違いなく、楠見CEOは車載電池が同社の成長領域であるという位置づけを変えない。

◆生産量の拡大、生産性の向上

まずは強固な基盤の構築に向けて、国内ではスバルとマツダとの車載電池供給契約に対応するため、大阪工場を中心に国内工場を事業転換して生産量の拡大を進める。米国では、昨年にルシッド社とヘクサゴンプルス社への供給契約を結んだが、さらにパナソニックの円筒形電池を採用してくれる取引先を増やしていく。

同時に収益性の改善に向けて、各工場の生産性向上に取り組む。具体的には、現在稼働中のネバダ工場で、継続的な生産性の改善を進めて、2030年度の生産能力を2023年度比で15%以上向上させる。さらに、24年度中に量産を開始する予定のカンザス工場では、ネバダ工場よりも人生産性30%以上の改善を目指す。


《山田清志》

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