車のサブスク「KINTO」は“価値の下がり幅を縮める”アフターサービスに注力

「KINTO ONE」は2023年12月末時点で累計申込数が10万件を突破
  • 「KINTO ONE」は2023年12月末時点で累計申込数が10万件を突破
  • 「KINTO ONE」は自動車保険と故障修理までコミコミ
  • 株式会社KINTO マーケティング企画部 曽根原由梨部長

東京ビッグサイトで開催された「第21回 国際オートアフターマーケットEXPO 2024(IAAE2024)」会期最終日の3月7日に『自動車販売の新しい潮流と今後の展望~ますます拡がる「KINTO」のサブスクリプションサービス~』と題されたセミナーに、株式会社KINTOマーケティング企画部の曽根原由梨部長が登壇。車のサブスクリプションサービス「KINTO ONE」をはじめ、同社が提供するサービスの特徴や最新動向、今後の展望などが語られた。

「KINTO ONE」は自動車保険と故障修理までコミコミ

車のサブスクリプションサービス「KINTO ONE」は、トヨタとレクサスの新車に初期費用ゼロ円・月々定額で乗れて、車両代や登録諸費用、定期メンテナンス、自動車税だけでなく、自動車保険と故障修理まで含まれる点が大きな特徴。24時間いつでもWeb申込契約が可能で納車目処もサイト上で確認でき、全国統一の商品・価格で提供されている。

ユーザーが車種やプランなどを選択してクレジットカード決済の審査が通ればWeb上で契約締結。Webだけでなく全国のトヨタ系ディーラー店頭でも申込みが可能だ。「KINTO ONE」は2019年3月から東京でトライアルが開始され、同年7月にトヨタ6車種のラインアップで全国展開。現在は30以上の車種を取り扱い、2023年12月末時点で累計申込数が10万件を突破した。

顧客目線で利用しやすいサービス設計

セミナーに登壇した曽根原部長は「KINTOが所有権をもつトヨタ車をマイカーのように年単位で利用できるサービスです。購入した瞬間から発生する面倒な手続きを一括でKINTOが行い、ガソリン代と駐車場代以外はすべてコミコミ。“ サブスクリプション ”と名付けることで、気軽にカーライフを始めて頂ける便益もあると思っています。はじめやすくやめやすい点もポイントで、これまでのカーリースは途中解約時は残債の支払いや、途中解約不可の約款にするサービスが多かったからこそ、やめやすい契約プランを設けました」と、顧客目線で利用しやすいサービス設計にこだわっていることを伝えた。

株式会社KINTO マーケティング企画部 曽根原由梨部長

ユーザーの傾向は20代以下と30代が4割で、申込は6割がWeb経由で「KINTO ONE」のサイトにアクセスが多い時間帯はお昼12時と20時~22時頃の深夜帯。リアル店舗が営業していない時間帯に、Web上でユーザーと接点を持てる点も特徴とのこと。個人だけでなく法人契約も受付けており、自動車保険は契約者の家族まで対象。中小企業や個人事業主の経営者の利用率が高いという。

二次流通できるスキーム

商物流としては、ユーザーがKINTOと契約を結ぶ。また自動車保険は東京海上日動火災保険株式会社、リースの資産管理やメンテナンス料支払いなどは住友三井オートサービ株式会社、与信や債権管理はトヨタファイナンス株式会社、車両売却時の査定などは株式会社トヨタユーゼックが関連会社として対応。

二次流通についても解説された。ユーザーが契約期間満了や途中解約で返却した車両はKINTOが展開する中古車サブスク「KINTO ONE 中古車」の車両になる場合と、トヨタ系ディーラーがユーザーと商談して買取りやオートオークションなどに流すルートが設けられているという。

曽根原部長は「KINTOをやると販売店様(ディーラー)が儲からないという声がありますが、ユーザー様は車検やメンテナンス、自動車保険を使用した故障修理で販売店様に入庫されるため、それが利益につながります。また契約期間満了や中途解約となった車両を二次流通できるスキームになっています」と話し、KINTOのサブスクは、トヨタ系ディーラーにとってもメリットがあることを伝えた。

「KINTO FACTORY」で既販車のアフターサービスに注力

トヨタ自動車とKINTOが提供する、トヨタ・レクサス・GRの既販車向けアップグレードサービス「KINTO FACTORY」についても紹介された。車種限定で純正オプションをトヨタ系ディーラーで後付けできるところが特徴。ADAS装置の後付けや内装のアップグレード、経年劣化で傷んだ内外装のリフレッシュ、アイテム交換などを提供している。

ADAS装置については、センサーやカメラといった部品の後付けを行うにはワイヤーハーネスが必要で、数多くの部品などを取り外す作業負荷が非常に高く、施工完了までに長時間を要する難しさがあることがKINTO FACTORYの検証段階で判明したという。

そこで、車の設計思想を変えるところからトヨタ自動車とKINTOが協力しあってスタートしたのが、2023年1月より新型プリウスのUグレードから提供開始となった「KINTO Unlimited」だと紹介された。Uグレードとは新車の時点でさまざまな装備の後付けを想定した “ アップグレードレディ設計 ” で製造された車両で、ブラインドスポットモニターなどのADAS装置を後付けしやすい設計になっている。また「KINTO Unlimited」では、後付けによるアップグレードに加え、コネクティッドサービス(運転診断で安全運転や燃費向上のアドバイスや、消耗品の劣化状況を予測し最適な交換タイミングで入庫案内など)も提供される。

曽根原部長は「お客様とお車を見守り、アップグレードで最新の装備を提供するサイクルを継続することでお客様はかわっても車両の生涯寿命を伸ばすことができ、車両価値の下がり幅を軽減できるのではないかというコンセプトでKINTO Unlimitedを提供しています。本来は数年後に下がる車の価値を、後付けで進化させることで価値の下がり幅が縮まれば、お客様の月額利用料をリーズナブルに設定できるという考えで、新型プリウスのUグレードはボーナス併用払いで月額18,400円(税込)からご提供しています」と伝え、現在はヤリスとヤリスクロスのUグレードも提供中と紹介した。

聴講した自動車アフターマーケット事業者から質問多数

講演の最後には、質疑応答の時間が設けられた。KINTO ONE車両のカスタマイズについて質問があり、純正ディーラーオプションの装着は問題ないが、取付時に穴あけ等を要するようなサードパーティ製品は不可で、返却時に原状回復が必要とのこと。

また自動車保険に関する質問があり注目を集めた。通常は保険を使うと翌年から保険料が上がる仕組みだが、KINTO ONEは全国統一の定額サービスのためユーザーの支払い額は変わらず、KINTOの事業リスクとして織り込まれているとのこと。事故率を下げる取り組みや故障修理時の交換パーツについてガイドラインを設けて交換修理費を適正化するなど企業努力を行っていると、曽根原部長は回答していた。この他にも多くの質問があり、トヨタグループが取り組む車のサブスクについて、多くの自動車アフターマーケット事業者が強い関心をもっていることが伺えた。

ユーザーの車両保有期間が10年を超え、新型車はADAS(先進運転支援システム)搭載や電動化などで販売価格が上昇し、新車購入率が低下する中で「所有」ではなく、月々定額で「利用」する車のサブスクが、若者世代を中心に普及が進んでいることは明らかだろう。またトヨタ自動車とKINTOは、ユーザーが車両購入後のアフターサービスに注力して付加価値を継続的に提供し、 “ 車の価値の下がり幅を縮める”という考え方で取り組んでいる点が実に合理的だと感じた。今回のセミナーは、幅広い自動車アフターマーケット事業者にとって今後のビジネスのヒントを得られるセミナーになったのではないだろうか。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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