充電器のラインナップやアプリ開発で現場のニーズに応えるユアスタンド【特集 EV充電インフラビジネス最前線】

基礎充電に特化し現場のニーズを反映

職場での基礎充電ニーズに対応

戸建て向けに高機能な充電器を提供

基礎充電的に使う急速充電

ユアスタンド 執行役員・社長室長のデニス・チア氏
  • ユアスタンド 執行役員・社長室長のデニス・チア氏
  • ユアスタンド導入事例
  • ユアスタンド導入事例
  • ユアスタンド導入事例
  • 選べる充電器
  • アプリ機能紹介
  • アプリ予約画面
  • アプリ充電中画面

日本の4割にのぼる集合住宅の世帯にとって、EVの購入はハードルが高い。このような状況の改善を図るため、集合住宅への充電器設置を推進する目的で「クリーンエネルギー自動車・充電インフラ導入促進補助金」が2021年からスタートしている。

この補助金を背景に、既設のマンションに充電器を設置する事例が増えるとともに、補助金の手続きや充電器設置のコンサルティング、実際の設置作業をおこなう企業が登場、注目を集めている。今回取り上げるユアスタンドもそのような企業のひとつだ。

2018年当時、同社代表取締役社長の浦伸行氏がマンションに住みながら電気自動車を購入し、充電器を設置しようとしたところ、さまざまな課題に直面。今後EVを普及させていくのであれば、日本の人口の4割が住むマンションに充電器が設置できないと普及が進まない。これを解決できないかと考えたのが起業のきっかけとなり、現在は横浜、大阪、名古屋に拠点を構え、基礎充電に特化して事業を展開している。

ユアスタンド 執行役員・社長室長のデニス・チア氏に、サービスの特徴や現在の事業展開、競合他社との差別化ポイントについて聞いた。

基礎充電に特化し現場のニーズを反映

---:まず御社の事業内容についてご紹介いただければと思います。

デニス・チア氏(以下敬称略):弊社は集合住宅向けに充電サービスを提供するところから事業をスタートしました。現在の主力サービスは、自宅マンション・戸建ての基礎充電ニーズに対応したものです。それから法人向けには職場の基礎充電とフリート充電向けのサービスを提供しています。

ユアスタンド導入事例

---:同様のサービスを提供している企業と比べて、どのような特徴がありますか。

チア:1つめの特徴は、自社で充電器を開発しておらず充電器メーカー数社と連携しているため、ニーズに合わせて充電器を選んでいただけることです。

選べる充電器

パナソニック、日東工業、モリテックスチール、椿本チエイン、最近ではスペインのウォールボックス社や、急速充電の韓国のシグネット社も選べます。ここまで充電器の種類が揃う事業者は他にないと思います。出力や機能、設置場所などのニーズに合わせて提案しています。

---:パナソニックはコンセントタイプのものですか?

チア:コンセントタイプもありますし、6kW出力のものもあります。また、マンションの場合、共用部に充電器を設置してみんなでシェアするか、個人専用区画に設置するのか、両方の提案ができます。さらに、機械式駐車場にも設置可能です。充電器メーカーと共同開発しており、コンセントタイプだけでなく、モード3の5kWの充電器も設置できます。この点は他社と比べて先進的な取り組みだと思います。

このように、設置するマンションのニーズに合わせて、基礎充電に特化して多様なサービスを提供していることもあり、昨年度は集合住宅で46%のシェア(※)がありました。

※ 経済産業省が提供する「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」を活用して充電器を設置した案件のうち、同社が手掛けたものが46%

---:料金プランはどのようになっているのでしょうか。

デニス:料金に関しては基本的に管理組合に決めていただき、弊社は20%の手数料をいただく形です。

また電気契約と連動する形になっているので、例えば来月電気代が20円上がるとしたら、赤字にならないようにシステム上で自動的に充電料金が上がるようになっています。管理組合が赤字にならないことが(持続するためには)重要なので、値上がり分は利用者に負担していただく受益者負担としています。ここも重要な差別化ポイントになっています。

---:利用者側は、電気料金が上がったら利用料金が上がるということを認識しているのですか?

チア:はい、充電する前に利用料が記載されているので、それを確認していただく形です。利用料は使用時間に比例した料金になります。決済は分単位で、途中で終了した場合はそれまで利用した何分間で決済されます。

---:従量課金にしてほしい、という声はありますか?

チア:はい、そういうご意見も多少ありますが、普通充電なので、ほぼ一定の電流が流れますので、実質的にはあまり差が無いと考えています。ただ、将来的に電気計量法(※)が緩和された場合は、計測する機能自体はもうあるのでいつでも従量課金にスイッチはできます。

※ 電気計量法によって使用できる電力量計が規定されている

現場のニーズに対応したアプリ開発

---:ほかにも基礎充電に特化しているという点に強みがあるのでしょうか。

チア:そうですね。例えば、弊社のアプリはマンションの基礎充電のニーズに合わせて開発していますので、遠隔でも予約できる機能があります。職場にいながら「明日充電したい」と思った時に、すぐに予約ができるという機能です。

アプリ予約画面

それから、マンションの来客用駐車場に充電器を設置してある場合、来客予約もEV充電予約も同じアプリで予約する機能があるので、管理が楽になります。こういったアプリ開発は内製化しており、現場のニーズに対応しています。

一方で管理者向けの充電器管理システムも用意しています。いつ、誰が充電予約しているのか、駐車予約しているのかを管理者側で確認でき、また管理会社の方で清掃用に場所を空けたいので一時的にブロックするということも可能です。このようなマンションの実際のニーズに沿った開発もしています。

来客用駐車場管理機能

例えば軽EVやPHEVの場合は、6kWの充電器があっても3kWでしか充電できません。課金は時間制なので、同じ1時間の充電でも日産『サクラ』は3kWhしか入らず、損をするという声は多くいただいていました。それに対応したという事例があります。

もう1つ、たくさんのご要望をいただいて開発した機能が超過料金です。充電器が共用部に設置してあるケースでは、充電が終わっていても放置されることがあります。その場合オーナーが近くにいないこともあるので、すぐに動かせず困ったことになります。そこで超過料金を設定しておき、充電時間が終わったときに移動しないと料金が加算されるという形でお金を徴収します。


《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

+ 続きを読む

特集