ボッシュは、パシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」において、「電動車に必要とされるサーマルマネジメントとは何か」と題したトークセッションを開催し、同社のサーマルマネジメントに対する考え方とソリューションを紹介した。その様子をレポートする。
EVにおけるサーマルマネジメントの要件
EVにおいては、従来のエンジン車とは違うサーマルマネジメントが必要になる。エンジンが無くなり熱源が失われることだけでなく、適温に保つ必要がある部品が多くなるという点を考慮する必要があるという。
「電動化が進展すると、従来のエンジン車と比べて、多数の電動部品が搭載されます。これらの電動部品はそれぞれ適切な温度範囲があり、その範囲内に保つためのサーマルマネジメントが求められます。また、電動化に伴い、従来エンジンが供給していた車内の暖房熱源が失われるため、新たな熱源の確保と管理が必要となります」
従来のエンジン車においてもサーマルマネジメントは存在したが、電動化による変化として、熱管理対象となる部品の増加と、熱源となるエンジンの消失が挙げられる。これらにより、熱管理システムは大きく変化し、複雑になると予測されるという。
「従来のエンジン車では、エンジン冷却と車室内の空調管理がサーマルシステムの主な役割でした。これが電動化に伴い、サーマルシステムに2つの大きな要因が生じます。1つ目は、モーターやインバーター、オンボードチャージャー、DCDCコンバーター、バッテリーなど、多くの電動部品が搭載されることです。これらの部品はそれぞれ適切な温度で運用する必要があり、そのために冷却だけでなく加熱も必要となる場合があります」

「2つ目の要因は、車室内の空調管理です。従来エンジンが供給していた暖房熱源がなくなるため、新たな熱源が必要になります。その1つの選択肢としては、電気ヒーターを用いる方法があります。しかし、電気ヒーターを用いて車室内を温めると、駆動用エネルギーであるバッテリーのエネルギーを暖房に使ってしまい、結果的に航続距離が短くなるという問題が生じます」