チューニングの醍醐味といえばパワーアップチューンだが、足まわりやブレーキ、冷却対策などパワーアップを受け止めるためのチューニングも必要になる!!
◆止まる、曲がるから強化しろとは言われるが…
パワーアップするチューニングといえば花形である。ターボ車ならブーストアップで簡単に数十馬力上がってしまう。タービン交換をすれば数百馬力単位でのパワーアップも可能だ。NAエンジンでもECUチューンと、エキマニやマフラー交換など合わせていけば、やはり数十馬力のパワー向上が見込める。そうなると当然加速力がアップする。サーキットならストレートスピードがアップするので、これまでよりも止まらなくなってしまう。そこで昔から「止まる」「曲がる」「走る」の順で強化しろと言われてきている。
「止まる」とは減速のことでブレーキ周りを強化しようということ。スピードが高くなりやすいので、その分ブレーキをチューニングしようということなのだ。もちろん、速度が乗りやすくなる分、ブレーキにかかる負荷も増えて温度が上がりがちになり、ブレーキパッドは熱を持ってフェードしやすくなる。フルードも熱を持って沸騰してしまうベーパーロックが起きやすくなるので対策が必要。スポーツパッドに交換してパッドの耐熱性を高めたり、沸騰温度の高いフルードに交換することが有効だ。
しかし、実は一番大事なのはタイヤだということ。ブレーキを強化すれば短い距離で止まれると思っている人も多いが、乗用車の場合ブレーキを強く踏めばロックしてABSが介入するところまで効かないクルマは少ない(トラックなどの大型車ではあるかもしれないが)。となると、ブレーキの絶対的制動力を強化してもすぐにABSが介入してしまっては同じ。つまりタイヤのグリップ力をアップさせないと意味がないのだ。
タイヤのグリップ力が高くなれば、その分強い力で減速させることができ短い距離で止まれる。ブレーキ強化はタイヤのグリップ力アップとセットでないと意味をなさないのだ。なのでタイヤのグリップ力を上げたいところだが、そこまでは……、というのであれば、タイヤが減っているなら新品に換えるとか、そういったことでもいいので気を配っておきたい。
次に「曲がる」性能のアップと言われるのが、車高調などを入れたりしてコーナリング性能をあげようということで、サーキットならよく止まってよく曲がるようにするだけでタイムは飛躍的にアップする。そしてそれらの準備ができてからパワーアップをさせようということなのだ。
しかし、パワーアップまでにかなりのコストと時間が掛かってしまう。公道に限って言えば、パワーアップしても法定速度で走っているハズなので絶対的な速度は上がらない。法定速度に上がるまでの時間が早くなるだけなハズである。であれば、無理にブレーキやサスペンションを導入せずとも、パワーアップチューンから行うのもアリだ。
◆エンジンを壊さないための対策は必須
ならばいきなりパワーアップしちゃうのもアリだが、同時に冷却対策は行っておきたい。パワーアップすると発生する熱も一気に増える。まずは追加メーターを取り付けたい。水温計でクーラントの温度を把握。油温計でエンジンオイルの温度をモニターするのは欠かせない。それから必要な対策を施すべきである。
水温は現代のクルマであれば90~105度くらいで安定していれば問題なし。2000年以前のクルマではれば80~95度くらいが目安。それでもいきなりラジエーターを変えるよりも、まずはサーモスタットの交換から。ラジエーターの容量がある程度あってもサーモスタットの開く温度が高く、高い水温で推移してしまっていることも少なくないからだ。
油温も90~110度くらいであれば全く問題なし。サーキットで120度を超えるようならオイルクーラーキットの取り付けを検討しても良い。高速道路で100度を超えるとか、110度になるなどは正常なのでオイルクーラーは不要。むしろ油温が下がりすぎると、オイル内の水分が蒸発せず乳化しやすくなりエンジンに良くないこともあるのだ。
メンテナンスにも気を配りたい。オイル交換するのは当然のこと、クーラントも定期交換しておくこと。ほかにもプラグも交換したいし、その熱価は何番が適正かはチューナーと相談して最適なものにしておくこと。また、最高の性能を発揮させるためにはエアクリーナーフィルターも純正品でいいので新品交換がオススメだ。