トヨタ自動車は4月7日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで、1日に就任した佐藤恒治社長が新体制方針説明会を開催した。中嶋裕樹副社長と宮崎洋一副社長も登壇し、それぞれ担当する商品軸、地域軸で説明を行った。
佐藤社長が新体制のテーマとして掲げたのが「継承と進化」だ。前社長の豊田章男会長が言い続けてきた「もっといいクルマをつくろうよ」を継承し、商品で経営することを「トヨタの1丁目1番地」と位置づけ、「クルマをつくり続ける社長でありたい」と強調した。
そのクルマづくりについては、従来通りに地域ごとの現実に沿った形でマルチパスウェイを軸にBEV、FCEV、HEV、PHEVなど多様な選択肢を用意する。まずはカーボンニュートラルに向けて、今すぐできる電動化をやっていく方針だ。
とは言うものの、取り組みが遅いと非難を浴びているBEVについては、開発の専門組織を新設して、2026年までに10車種を新たに投入して年間150万台の販売を目指す。22年のBEV販売実績が約2万4000台だから、4年で60倍以上増やそうというわけだ。膨大な保有台数を誇り、取引先が多岐にわたるトヨタならたぶんクリアできるだろう。
また、エネルギー産業と連携してカーボンニュートラル燃料の技術開発も進めていくという。「私たちは、新興国も含めて、誰ひとり取り残すことなく電動車の普及やCO2の低減に取り組んでいく」と佐藤社長は話し、「敵は炭素だ」と強調する。
そして、クルマの未来を変えていくもう一つのテーマを「移動価値の拡張」とし、電動化、知能化、多様化に合わせてモビリティを軸とした新しい付加価値を提供してクルマの可能性を広げていく。例えば、自動運転EV『eパレット』などの新しいモビリティやMaaSである。
「安全・安心や運転する楽しさなどこれまで培ってきたクルマの本質的な価値を基盤にもっと社会の役に立つ存在へクルマを進化させること。そして、誰もが自由に、楽しく、快適に移動できるモビリティ社会を実現すること。そんな未来に向けて、モビリティ・カンパニーへの変革を進めていく」と佐藤社長は説明する。
自動車メーカーはこれまで産業界の頂点に君臨し、その代表がトヨタと言っていい。しかし、100年に一度と言われる大変革時代を迎え、IT企業などの参入によって、その地位が危うくなっている。トヨタがこれからも頂点に居続けるためには進化し続ける必要がある。そのためにウーブンシティの実証実験など新しい挑戦を行い、産業を超えた仲間づくりを急いでいる。その意味で、佐藤社長が舵を取る、これからの数年間がトヨタにとって非常に重要な時期になることは間違いない。