「空飛ぶレーシングカー」Airspeederが初の有人飛行モデルを発表、2024年にシリーズ戦開催へ

Alauda Aeronautics, Airspeeder
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豪Alauda Aeronauticsが、まるでF1マシンのような空飛ぶレーシングカー「Airspeeder MK4」を発表、3月9日に開催されるスタートアップ企業のフェスティバル「_SOUTHSTART // ODYSSEY 」で一般公開することを明らかにしました。

Airspeederは、オーストラリアのマット・ピアソン氏が2017年に、有人の電動垂直離着陸(eVTOL)レーシング機Airspeederのコンセプトを発表、まったく新しい空中でのスポーツの開催を目指してプロジェクトを立ち上げたのがその歴史の始まり。

ピアソン氏はAirspeederプロジェクト用の機体を開発するAlauda Aeronauticsを設立し、2019年に最初のバージョンとなるAirspeeder 「MK1」を発表、さらに2021年初頭にはフルサイズのワーキングプロトタイプとなる「MK3」を公開し、同年後半には遠隔操縦ながら、砂漠に設定した300mの直線レーンで、2機のMK3による初のドラッグレースを実施しました。2022年には、オーストラリア・アデレード近郊で1kmのコースを設定してのMK3によるレースも開催しました。

今回Alaudaが新しく発表した「MK4」は、パイロットが乗り込むコクピットが機体の中央に配置され、前後に2つずつ、合計4つのローターと水平のフィンを装備、まるでF1マシンのタイヤをローターに置き換えたかのようなスタイリングになっています。MK3まではどことなく1950年代のフロントエンジン時代のF1にも似たデザインでしたが、MK4は外観的にも見栄えがするものに大きく変わりました。

MK4のローターはAIを使ったフライトコントローラーによる制御で、離陸時の水平な位置から、高速飛行時にはほぼ垂直な状態にその角度を変化させるようになっています。前後のフィンの断面は翼形状になっていて、多少の揚力を発声し、またF1マシンのサイドポンツーンにあたる部分はボックスウィングになっており、水平飛行時の姿勢安定に役立ちそうな形状をしています。

MK4のサイズは、全長5.73m、全幅3.62m、全高1.44m。重量は950kgとのこと。モノコックはカーボンファイバー製。動力面は、MK3までのバッテリーでモーターを駆動する一般的な方式だったのに対して、MK4では水素燃料でガスタービンを回し、モーターとバッテリーに電力を供給する「Thunder Strike」エンジンシステムに変更されました。これはAlaudaいわく「ロケットエンジン用に開発された3Dプリント技術を駆使して作られた、独自の燃焼器が特徴」とのこと。この燃焼器により、水素の炎が比較的低温で保たれるため、亜酸化窒素の排出を大幅に削減できると説明されています。また燃料として使う水素はCO2排出を低く保つために、再生可能エネルギーで水を電気分解して作った「グリーン水素」を用いるとのこと。

ちなみに、MK4がF1っぽい外観だけでなく、その最高速度もF1マシンと同等の360km/hに達します。Alaudaは「マルチコプターというよりはジェット戦闘機やF1マシンのように操縦できる」とその機動性を説明しています。

Airspeederは現在、世界初となる有人eVTOLによる「EXAシリーズ」の開催を2024年を目標として計画しており、世界から参戦チームを募っています。すでにFOX Sportsオーストラリアとの間で2年間の放送契約を結んだことも発表されています。

ピアソン氏はEXAシリーズでは「各分野で最も高い技術を持つパイロットが搭乗し、ブレード・トゥ・ブレードのレースを戦う」「いまこそ世界で最も先進的・革新的、そして野心的な自動車ブランドやOEMメーカー、モータースポーツチームが集い、真に革命的な新しいモータースポーツに参加する時だ」と力説し、フォーミュラEやエクストリームEのような新世代のモータースポーツのひとつとして、EXAシリーズを開催、定着させて行きたい考えを示しています。


《Munenori Taniguchi》

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