クルマの販売が変わる…中古車・リース・サブスクの新しいプラットフォームビジネスCARRO JAPAN工藤裕哉CEO[インタビュー]

クルマの販売が変わる…中古車・リース・サブスクの新しいプラットフォームビジネスCARRO JAPAN工藤裕哉CEO[インタビュー]
  • クルマの販売が変わる…中古車・リース・サブスクの新しいプラットフォームビジネスCARRO JAPAN工藤裕哉CEO[インタビュー]

自動車の販売ビジネスもITシステムのように所有から利用へと変わるのだろうか。たしかにその片鱗は見え始め、無視のできない潮流になろうとしている。とくに、車両価格の上昇、メーカーの供給体制の不安定化・長納期化が期せずしてこの流れを後押ししている。

■新車不足は中古車市場にとって朗報なのか?

長納期化については半導体不足が直接の原因とされているが、輸入車の供給体制と比べるとそれだけを理由とするには無理がある。値上げについては円安や電動化やカーボンニュートラル(フェーズ3ではサプライチェーン全体の取り組みが必要)への対応で説明される。しかし、それ以前に日本の場合、コストダウンや「乾いたぞうきんを絞る」ことが限界にきている。

新車の長納期化や値上げの背景は複雑で多元的(環境問題、円安、地政学的リスク、パンデミック、産業構造の問題、グローバル化やDXへの対応の遅れ、法規制など)だ。メーカーとしては価格維持、リセールバリュー維持というプラス効果もあるが、納期が年単位、ディーラーに新車の割り当て制や抽選を導入するなど、工業製品としては異常事態だ。「それだけ需要があるから」などと安心していい問題ではない。

問題を中長期で見れば、法人を含む消費者側にとっては新しい自動車の所有形態、利用形態に移行する動機付けになる可能性もある。新車供給不足は中古車市場の活況につながっている。リースやレンタカー事業、シェアカー事業にも追い風となりうる。しかし、既存の販売モデルにこだわらなければ、新しいビジネス、市場としてとらえることができる。

■シンガポール発の独自プラットフォーム:CARRO

国内でもメーカーが残価設定や新車リースの新しいプラン、サブスクリプション風の月額固定プランを提供したり、ディーラーも同様な取り組みを行っている。新しい市場として新規参入の動きもある。そのひとつに「CARRO JAPAN」社がある。同社の代表取締役 CEO 工藤裕哉氏が2月24日に開催する無料のオンラインセミナー【2023年「クルマ×金融」各社の挑戦~サブスク・リース・法人・個人・新車・中古車~】で「データ&AIを活用した中古自動車の所有の仕方および利用体験の変革」をテーマに講演する。

講演の中では、同社の事業概要と戦略、今後の展開が紹介される予定だが、特徴はCARRO独自のプラットフォームとAIを活用したさまざまなソリューションのチェーンを持っている点だ。単に車両リースやローンの延長にある販売形態だけに収まらず、きたるべき「クルマの所有から利用の時代」へのビジネスまで対応が可能だ。

CARRO JAPANはソフトバンクとCARROによるJV。CARROはシンガポール発のベンチャー。タイ、インドネシア、マレーシアを中心に東南アジアで金融を含む独自のプラットフォームを展開する企業だ。現地では、中古車売買、サブスクリプション、保険、オートファイナンス、車両メンテナンスや運行管理、ロードサービスなどを包括的にカバーしている。

これらを一気通貫で押さえることができるのは、CARROが独自に車両データを収集管理するプラットフォームを持っているからだ。集まったデータはAIによって解析され、精度の高い残価予想、車両査定、故障予測、走行履歴管理に利用される。技術力は高く、エンジン音から故障個所を診断するAIの研究開発なども行っている。スマートキーソリューションも持っており、シェアカーやレンタカーのプラットフォームとしても活用できる。

■国内は事業者向けに柔軟な中古車リースから展開

工藤氏によれば、CARRO JAPANではこれらのサービスを一気に展開するのではなく、まずは事業者向けの中古車リース、社有車のオンライン管理、給油やメンテナンスといった領域から始める。アプリによるオンラインサービス、多様なリースプランに対応することで差別化を図るという。

CARROのAIで、ある国内車両の過去5年間分のデータを使って、いくつかの年の売却額を予測したところ、22年の実価格との誤差が少なかった。精度が期待できるAIを活用することで、リース期間を2年からと短くしたり、フレキシブルな期間設定ができるようになったという。

現在、自動車のサブスクリプションといっても、初期費用が高額、長期契約、解約・契約の自由度が低いといった制限があり、サブスクリプションとは言えないものが多い。CARROのプラットフォームは、AIによってリースや利用料の最適化(リスクマージンの最小化)を目指し、1か月単位の契約など柔軟なプランを視野に入れているという。ビジネス領域も「法人や交通事業者から一般消費者(B2BからB2C)に適宜広げていきたい(工藤氏)」とする。

国内にはすでに、中古車売買のプラットフォームが存在する。大手リース会社のチェーンも同様だ。その中でCARROのビジネスモデルやプラットフォームは埋もれてみえるかもしれない。しかし、車両取引から運行管理、ファイナンス、シェアビジネスまでカバーできるプラットフォームと独自AIは、これからの多様な車両利用スタイルに合致したものといえる。国内主要リース会社もCARRO JAPANと取引があるという。業界の新しい取り組みとして注視したい。

工藤氏をはじめ5社が登壇予定の無料のオンラインセミナー【2023年「クルマ×金融」各社の挑戦~サブスク・リース・法人・個人・新車・中古車~】は2月24日開催。詳細はこちら。申込締切は2月22日正午。

《中尾真二》

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