丸紅が日本導入を進めるeVTOLとねらい…丸紅 航空宇宙・防衛事業部 航空第三課 課長 吉川祐一氏[インタビュー]

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次世代の移動手段として世界で注目を集めるエアモビリティ。丸紅は、日本でのエアモビリティの実装に向けた取組みをVertical Aerospace社と連携して推進している。12月1日に開催予定のオンラインセミナー「空飛ぶクルマ 大阪・関西万博での実装に向けて」に登壇し、「空飛ぶクルマ社会実装に向けた丸紅の取組み」について講演する、丸紅株式会社 航空宇宙・防衛事業部 航空第三課 課長の吉川祐一氏に、セミナーの見どころについて聞いた。

セミナー概要

空飛ぶクルマ 大阪・関西万博での実装に向けて
<3>空飛ぶクルマ社会実装に向けた丸紅の取組み
1.日本でのユースケース可能性
2.丸紅の取組み
(1)Vertical Aerospaceとの提携
(2)LIFT Aircraftとの提携
3.大阪府での実証事業取組み紹介

セミナーの詳細はこちらから。申込締切は11月29日(火)正午。

丸紅が日本導入を進めるeVTOL

---:エアモビリティに関する丸紅の取組みを教えてください。

吉川:まずVertical AerospaceのeVTOLを導入する計画をしています。2025年に型式証明が取れる前提で今開発を進めているので、2025年以降日本に導入して事業化をしていくのが当社のねらいです。

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機体は5人乗りでパイロット1名なので、お客さんが4人です。航続距離は160キロ超ということなので、他メーカーを含めて現在開発が進んでいる機体の中では長く飛べるほうですね。

---:これはバッテリーで飛ぶのですか。

吉川:そうです。eVTOL (Electric vertical take-off and landing) で、固定翼がついている小型航空機のようなものですが、そこに可動式のプロペラがついていて垂直離着陸できる機体です。

水平移動するときは、上に向いていた前4つのプロペラが前方に向いて、本当に航空機のよう滑空する機体です。ですので、ヘリコプターよりスピードが速いです。

機体は航空産業の一流企業と共同開発しています。ハネウェル・ロールスロイス・レオナルド・ソルベイなど、航空産業の一流企業と一緒に共同開発しており、認証の取得に向けて確度が高い会社だと考えています。

ヘリコプターのようにものすごく大きなローターがあるわけではなく、ジェットエンジンのような内燃機関もないので、非常に音が静かだという特徴があります。

このような機体を、当社は最大200機までの予約発注の権利を持っています。200機全部をすぐに日本に持ってくるわけではありませんが、スモールスタートで徐々に日本に導入して、いろんな人たちとタッグを組みながら運航サービスを作り上げていきたいと思っています。

具体的には、日本の市場調査や機体認証のサポート、そして実際に飛ばすためには発着や充電用のインフラがもっともっと充実してこないと飛べないので、関係各社とも連携して進めていきます。もちろん社会受容性も非常に重要ですので、そのような取組みを一緒にしていく企業と業務提携しています。

eVTOLのユースケースとは

---:どのようなユースケースが想定されるのでしょうか。

吉川:いろいろあるのですが、いくら便利な乗り物でも「自分の上は飛んでほしくない」という懸念は、最初はどうしてもあると思います。そのあたりを考慮すると、海の上や川の上は飛びやすいルートではあります。他の交通手段を使うよりも時間の観点からも効率的ですので、ユースケースとしては有望です。

例えば九州から四国への移動は、フェリーでゆっくりと移動するか、地上で行こうとするとかなり大回りで時間がかかりますが、一例としては愛媛の松山と大分を結ぶルートなどを考えています。

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さらに遠距離の事例では、Vertical Aerospaceの機体は150~200kmほど飛べる能力がありますので、これは一例ですが、東京駅を起点として飛行時間30分・150kmキロ圏内が航行可能となります。このような中長距離の移動の需要がかなり期待できると考えています

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---:30分でかなり遠くまで飛べるんですね。

吉川:軽井沢や日光、富士山の向こう側の伊豆半島が、全部くるりと入ってきます。この地図で濃いピンクが新幹線で1時間で行けるところです。

---:全然違いますね。

吉川:短時間で遠くまで飛べますので、移動の時間を短縮する効果は非常に大きいです。まずはその点を訴求するビジネスモデルを作っていきたいと考えています。

実際には、まずコストをどこまで抑えられるか、社会受容性を醸成できるかも重要です。また、都市部で離発着できる場所も必要になってくるなど、いろいろな課題はあります。

コスト面は、高頻度で飛べるようになるにつれて徐々に下がっていくので、最終的に距離あたりの運賃はタクシーと同程度になるポテンシャルは十分あると思っています。

---:それで150km飛べるとなると、いろいろなニーズが出てきそうですね

吉川:そうなんです。現在開発されているeVTOLのなかでも、大型のドローンのようなマルチコプター形状のものは、飛行時間が20分、距離は30~40kmで、都市内や短距離の移動に使うものもありますが、当社の扱うVertical Aerospaceの機体では、中距離以上、100km以上離れた目的地までひとっ飛びというユースケースが、まずはできてくるのではないかと思っています。

丸紅の事業スコープ

---:そのような機体で、どのような事業展開を考えているのでしょうか。

吉川:当社が狙う事業スコープとして、真ん中に運航事業を置いています。人々に運航サービスを提供することをメインに考え、そのためには必要なピースがいろいろあります。我々は商社なので、事業を作っていくところをいろいろな人たちと一緒にやっていく、必要なピースを埋めていきたいということで、このように少し広めの丸いスコープを描いています。

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---:御社は200機の予約の権利があるとのことですが、その200機でこれらの領域を展開していくということでしょうか。

吉川:そうですね。もちろんいきなり200機買うということはなくて、最初は10機程度から始めてというところだと思います。スモールスタートから、だんだん事業領域を広げていきます。

このようなエアモビリティは、まったく新しい移動手段なので、実現までにはいろいろと課題があると思います。航空業界では、これまで電力供給を気にしたことはないでしょうし、今後はバッテリーのリサイクルも考えていかなければなりません。

こういった課題に対しても、当社のなかにはノウハウを持っている部隊がいますので、それを生かしながらサービス全体を作っていけたらと思っています。

そして、大阪府で採択されている実証事業があります。大阪市内から、紀伊半島の南東にある那智勝浦の高級リゾートまで、車で行くと4時間くらいかかるところですが、これを空路で結ぶという実証実験をやります。12月か1月に実施を考えていて、11月から一般のお客様の公募を開始するところです。

---:紀伊半島の下のほうは、なかなか行きづらいですね。

吉川:そうなんです。飛べば30分で行けるところなので、こういったルートを開発していきたいと思っています。今回は、南海電鉄の関連企業である「ホテル中の島」という高級リゾートホテルにヘリポートがあるので、大阪からそこまで飛ばす実証実験を考えています。

実証で飛ばすのはヘリコプターですが、お客さんを一般公募して、将来想定する空飛ぶクルマの料金で乗っていただくことをしようと思っています。そのなかで、お客さまからは所要時間や料金についてのご意見をいただいて、将来の事業化に生かしていきたいと考えています。

吉川氏が登壇するオンラインセミナー「空飛ぶクルマ 大阪・関西万博での実装に向けて」は12月1日開催。詳細・お申込はこちらから。申込締切は11月29日(火)正午。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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