ガソリン補助金がスタンドの経営改善に使われたってほんと? 財務省の調査

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  • ガソリン全国平均価格への激変緩和事業の効果(10月5日)

政府のガソリン補助金がガソリン価格の引き下げではなく、スタンドの経営改善に使われていた、という報道があった。財務省の調査によると、3~7月の補助金総額5577億円に対し、抑制額は5467億円で、110億円が価格抑制に使われていなかった。その差は総額の2%。

財務省が10月7日に発表した「令和4年度予算執行調査の調査結果の概要(10月公表分)」で明らかにされた。

◆35.3円/Lの抑制効果

経済産業省が管轄する「燃料油価格激変緩和対策事業」は、元売事業者などに価格抑制の原資を補助金として支給し、ガソリンなどの燃料油の卸価格抑制を通じて、小売価格急騰の抑制を図るもの。令和3年度(2021年度)に4472億6200万円、令和4年度(2022年度)に2774億3500万円が用意されている。

事業では、レギュラーガソリン1リットルあたりの予測全国平均小売価格から発動基準価格168円を差し引いた額の補助金を、元売事業者に支給する。卸価格の抑制が小売価格の抑制に反映される仕組みだ。補助上限額は35円/L。予想価格と基準価格との差が35円/Lを超過する分については、その2分の1を支援する。

1月24日調査時点における価格が170.2円/Lとなり、発動要件の170円/Lを超えたため、激変緩和事業が発動した。補助上限額について、制度開始直後は5円、3月10日以降は25円、4月28日以降は35円とされている。資源エネルギー庁では10月3日現在、35.3円/Lの抑制効果があるとしている。同日、全国平均小売価格は169.1円/L(資源エネルギー庁しらべ)、平均購入価格155.8円/L(e燃費しらべ)となっている。

ガソリン全国平均価格への激変緩和事業の効果(10月5日)ガソリン全国平均価格への激変緩和事業の効果(10月5日)

財務省では小売事業者(SS・計294事業者)に対し、ガソリンの販売価格の決定方法などについて、書面および聞き取り調査を行ない、補助金の販売価格への影響について、実態を調査した。なお全国の揮発油販売業者数は、資源エネルギー庁によると2021年度末で1万3008事業者がある。

◆補助金を小売価格に転嫁しなかった理由

SSの店頭でのガソリン販売価格について、補助金全額分抑制されているのか。この問いに対して、事業者の23%(36SS)が「補助金全額は抑制できていない」、32%(49SS)が補助金全額分抑制できているか「分からない」、と回答した。「補助金全額分抑制されている」としたのは45%(70SS)だった。

補助金全額分を販売価格に転嫁していない理由としては、「近隣店舗の市況を見て判断した」が最多の75%(64SS)だった。次いで「過去の価格変動による転嫁不足が生じていた」が25%(21SS)だった。他方、「自社の利益(赤字補填など)」は2%(2SS)、「販管費」は解答がなかった。

補助金全額分を販売価格に転嫁できなかった理由(回答数85SS)
1位:近隣店舗の市況を見て判断したため…75%(64SS)
2位:過去の価格変動による転嫁不足が生じていたため…25%(21SS)
3位:小売価格の急激な変動を避けるため、複数週に分けて卸売価格の変動を反映させたため…24%(20SS)
4位:卸売価格に補助金がいくら反映されているか知らないため…18%(15SS)
5位:卸売価格時点で補助金全額が反映されていなかったため…14%(12SS)
6位:将来の需要見込みを考慮して…7%(6SS)
7位:自社の利益(赤字補填など)に充てたため…2%(2SS)
8位:販管費(人件費や設備投資費など)に充てたため…0%(0SS)
その他…8%(7SS)

◆補助金総額の2%が価格に転嫁されていない

財務省で、補助金支給単価と抑制額の幅(予測価格と実際の平均価格との差額)を比較し、3~7月のガソリン販売実績量を基に、機械的に推計したところ、ガソリン分で、補助金額が5577億1300万円だったのに対し、抑制額はそれより少ない5466億6600万円だった。

実際の抑制額が補助額を約110億円下回っており、補助金総額の2%が価格に転嫁されていないわけだ。「補助金全額は抑制されていない」または「抑制されているか分からない」としたSSが過半数の55%あった中での2%だ。

また、事業では補助金が元売事業者に支給されるいっぽうで、財務省の調査では補助金によって卸価格がどのていど抑制されているかについては言及がない。小売事業者が補助金全額分を販売価格に転嫁できなかった理由として、「卸売価格時点で補助金全額が反映されていない」が14%、「卸売価格に補助金がいくら反映されているか知らない」が18%あったことから、差額2%の原因が全て小売業者にあったとは、今回公表された調査結果からは判断できない。

財務省では、今後の改善点・検討の方向性として「本補助金の趣旨について改めてSSに対し周知徹底を行い、補助金全額の販売価格への転嫁を促すべきである」としている。

《高木啓》

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