【EV化で変わる自動車部品産業】第3回 日産系サプライヤーの衝撃的再編成

日産 アリア
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2010年代後半、CASE、MaaS革命に向けてのプラットフォーム構築競争は、日本における系列・下請関係にも衝撃的な再編成をもたらすことになった。

日産自動車は2016年11月に、系列企業の主柱ともいうべきカルソニックカンセイの株式売却を発表し、また2019年10月、日立オートモーティブはホンダ系列の主要企業であるケーヒン、ショーワ、日信工業3社と合併し、システム・サプライヤーを目指すことを発表、両案件とも日産・ホンダ両系列関係解体に決着をつけるような衝撃的な内容であった。

カルソニックカンセイの売却によるマレリ(MMCK)の誕生

日産自動車は2016年11月22日に41 %を所有する子会社カルソニックカンセイの全株式を米投資ファンドのKKRに売却することを決定、KKRが全額出資するCKホールディングスが公開買付を行った。日産は1000億円程度をこの売却で資金調達し、三菱自動車の株式34%を取得するほか、電気自動車やPHVなどの先進技術開発に振り向けるなど、研究開発費捻出をも目的としていた。

カルソニックは日産系列1400社の中でも基幹4社に入り、2005年に連結子会社化した後、モジュール生産や海外展開でも日産グループの中核として発展、2015年の売上高は1兆円に達していた。この売却は2017年に、KKRが設立したCKホールディングスが100%株主となって成立したが、日産リバイバルプランが実施された2000年代初頭にも自立の機会があったのに、モジュール生産を支えるために改めて系列メーカーとして役員を送り込まれた経緯がある。その方針に基づいて1兆円規模のメガサプライヤーに成長した日産圏最大のカルソニックカンセイを切り捨てる判断については、マスコミには「容赦なさすぎる系列完全解体」と批判的に報じられる事態となった[1]。

この系列解体には、もう一つのストーリーがある。米系投資ファンドKKRは、日産系列を離れたカルソニックカンセイを国際再編の重要カードとして使った。CKホールディングス(KKR)は2018年10月、FCA(フィアット・クライスラー)の子会社、マニエッティ・マレリを62億ユーロ(8060億円)で買収。旧カルソニックカンセイとFCAの部品部門を経営統合し(MMCK)、新ブランド「マレリ」が誕生した。その時点でMMCKホールディングスの売上高は両社を合わせて1兆9750億円、世界10位になって規模の拡大を実現し、財務基盤強化、製品ラインと事業エリア(アジアと欧州)での相互補完が進むという楽観的な見通しであった。

具体的に言えば従業員数62,000人、世界170拠点のうち、日本に統括本社と研究開発拠点を、また米国・欧主・中国・アジアに統括拠点を置いた。新会社マレリはFCAとは複数年供給契約を結んでおり、他方でCKはFCAへの納入拡大で日産依存を7割まで下げて経営基盤を安定させる。製品分野はCPM/内装部品、電動パワートレイン、電子製品、排気製品、空調・熱交換器製品、コンプレッサー部品などの6分野に展開するという構想であった。


《清 晌一郎》

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