JR北海道は6月3日、経営改善へ向けた2022年度の施策と2021年度の線区別収支を公表した。
2022年度の施策では、コロナ禍で減少した鉄道運輸収入を挽回するべく589億円の達成を目指すとしており、利用者の減少が続いている北海道新幹線(新青森~新函館北斗)では1日平均で3300人の獲得を目標に掲げている。
また、7~9月の第2四半期(2Q)では、観光列車仕様のキハ261系5000番台の1号車フリースペースをテレワークスペースとする実証実験を実施。鉄道事業の効率化・省力化を図るため、10~12月の第3四半期(3Q)では一般型気動車のH100形4両を観光列車用に改造するとともに、2両編成のワンマン電車2本を導入。ワンマン電車は2023年1~3月の第4四半期(4Q)にさらに5本を導入するとしている。
一方、2021年度の4Qでは札幌駅がロックアウトするほど深刻な雪害に見舞われたことから、鉄道輸送の品質向上策として、4~6月の第1四半期(1Q)で雪害対策設備の設置・増強計画を策定し、冬を迎える3Qで設備の運用を開始するとしている。
大雪禍に悩まされた2021年度の4Q。写真は雪に埋まった721系電車。2022年2月6日、函館本線厚別駅。2021年度の線区別収支については、全線区が赤字状態であることに変わりはないが、2020年度比で札幌圏や「赤線区」と呼ばれる根室本線富良野~新得間、留萌本線深川~留萌間で赤字額が減少。逆に北海道新幹線は営業収益が4億7300万円増加したものの、地上設備の維持コストが増大した結果、赤字額が4億2900万円拡大している。
2021年度は管理費を含むと150億円近い赤字を計上した北海道新幹線。これは札幌圏の全線区に匹敵する規模だ。2019年12月28日。北海道新幹線新函館北斗駅。ちなみに、北海道新幹線札幌延伸に伴なう並行在来線のうち、3月に事実上の廃止が決定した函館本線長万部~小樽間は、2020年度より営業収益が700万円増加、営業費用が1100万円減少し、赤字が1700万円減少した。存廃が検討されている函館~長万部間も営業収益が1億9900万円増加し、営業費用が5億6000万円減少した結果、赤字が7億6000万円減少した。
1日あたりの輸送密度については、2020年度と変わらず根室本線富良野~新得間が7人減の50人でワースト。函館本線長万部~小樽間は2020年度より9人減の340人、函館~長万部間は193人増の1636人となっており、富良野~新得間は営業係数も3287(管理費を含まない場合2512)でワーストとなっている。
沿線自治体が鉄道存続を断念している根室本線富良野~新得間。2021年度も輸送密度、営業係数ともにワーストだった。根室本線金山~東鹿越。2011年7月28日。