静岡県外流出の水問題に具体案…山梨県側の水を同量戻し リニア静岡工区問題

山梨・静岡・長野県境付近の断層帯を掘削中のトンネル湧水と全量戻しの流れ。作業員の安全を考慮して掘削は山梨、長野側から行なわれるが、静岡県の湧水が県外へ流出することは避けられないため、今回は流出分を補填する具体的な方策が示された。
  • 山梨・静岡・長野県境付近の断層帯を掘削中のトンネル湧水と全量戻しの流れ。作業員の安全を考慮して掘削は山梨、長野側から行なわれるが、静岡県の湧水が県外へ流出することは避けられないため、今回は流出分を補填する具体的な方策が示された。
  • 10か月程度と想定した工事期間、田代ダムの取水を制限して、県外流出量を大井川に還元する案の概要。
  • 静岡県外で発生した湧水を大井川へ戻す案の概要(山梨県からの場合)。
  • 山梨県で発生した湧水をポンプアップする区間。山梨工区の本坑、先進坑、斜坑の約16.6kmが対象。
  • 県外流出を抑制する方策も提案された。先進坑から県境付近に向け高速長尺先進ボーリングで小さな孔を空け、ボーリングの口元から湧出する県境付近の地下水をポンプアップして大井川へ流すというもの。
  • 山梨工区での施工の様子。

JR東海は4月26日、静岡県中央新幹線環境保全連絡会議地質構造・水資源部会専門部会(静岡県専門部会)に対し、リニア中央新幹線静岡工区で県外流出する湧水を大井川へ全量を戻す新たな方策を提案した。

静岡県がリニア工事により流出した大井川の水を全量戻すことを着工条件としている静岡工区については、JR東海がトンネル湧水をポンプアップとトンネル導水路により上流の椹島(さわらじま)まで戻す方針を示しており、2021年12月に国のリニア中央新幹線静岡工区有識者会議で取りまとめれられた中間報告では、JR東海の方式により大井川中下流域の河川流量は維持されるとされたが、県外への流出分を大井川へ戻す具体的な方策が示されていないとして、静岡県が難色を示していた。

そこでJR東海は、田代川第二発電所(山梨県早川町)の取水用ダムである田代ダム(静岡市葵区)で行なっている発電のための取水を制限し、県外流出相当分を大井川に還元することを提案。ダムを管理する東京電力リニューアブルパワーへ依頼して検討するとしている。

10か月程度と想定した工事期間、田代ダムの取水を制限して、県外流出量を大井川に還元する案の概要。10か月程度と想定した工事期間、田代ダムの取水を制限して、県外流出量を大井川に還元する案の概要。

これとは別に、隣接する山梨県で発生する湧水を山梨県側と静岡県側との先進坑が貫通した際に、大井川へ戻す案も示している。

静岡県外で発生した湧水を大井川へ戻す案の概要(山梨県からの場合)。静岡県外で発生した湧水を大井川へ戻す案の概要(山梨県からの場合)。
山梨県で発生した湧水をポンプアップする区間。山梨工区の本坑、先進坑、斜坑の約16.6kmが対象。山梨県で発生した湧水をポンプアップする区間。山梨工区の本坑、先進坑、斜坑の約16.6kmが対象。

田代ダムの取水制限については渇水期に行なえるかどうか疑問が残るが、山梨県側の水を戻す案については、渇水期に重点的に対応できるとしており、県外流出量の同量を大井川へ戻す期間はJR東海が解析している300万立方mの場合約1年1か月、静岡県が解析している500立方mの場合約1年9カ月と見込まれている。

山梨工区での施工の様子。山梨工区での施工の様子。

これらの提案を受けて、今後、静岡県専門部会で協議が重ねられる模様で、静岡工区着工へ向けて局面を打開できるかどうかが注目される。

県外流出を抑制する方策も提案された。先進坑から県境付近に向け高速長尺先進ボーリングで小さな孔を空け、ボーリングの口元から湧出する県境付近の地下水をポンプアップして大井川へ流すというもの。県外流出を抑制する方策も提案された。先進坑から県境付近に向け高速長尺先進ボーリングで小さな孔を空け、ボーリングの口元から湧出する県境付近の地下水をポンプアップして大井川へ流すというもの。
《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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