自治体へ負担を求めるのは筋違い…丸山島根県知事 JR西日本の不採算線区問題

木次線の普通列車に運用されているキハ120形。
  • 木次線の普通列車に運用されているキハ120形。
  • 木次線名物のトロッコ列車『奥出雲おろち号』。2023年度限りで運行を終了する予定となっている。
  • 映画の舞台にもなった木次線亀嵩(かめだけ)駅。出雲横田駅の隣接駅。
  • 島根県が沿線自治体とともに支援している一畑電車。
  • 山陰線島根県内
  • 山陰線島根県内

丸山達也島根県知事は4月14日に開かれた定例会見で、JR西日本の不採算線区問題について記者の質問に答えた。

JR西日本が4月11日に公表した輸送密度2000人/日未満における線区収支によると、島根県内では広島県に跨る木次(きすき)線と山陰本線出雲市以西の収支が挙げられている。

このうち木次線は、島根県内の宍道~出雲横田間が2017~2019年度の年平均で7億2000万円の赤字となっており、2019年度の輸送密度は277人。100円を稼ぐために要した費用の指標である営業係数は1323で、収入に対する費用の割合を示す収支率は7.6%と低い水準だった。

コロナ禍を含む2018~2020年度では、年平均の赤字が6億9000万円に減少しているものの、2020年度の輸送密度は198人と大きく落ち込んだこともあり、営業係数は1482に拡大。収支率は6.7%だった。

木次線名物のトロッコ列車『奥出雲おろち号』。2023年度限りで運行を終了する予定となっている。木次線名物のトロッコ列車『奥出雲おろち号』。2023年度限りで運行を終了する予定となっている。

この公表に対して丸山知事は「JR西日本の経営上の判断であり、木次線の数字は厳しいと認識している。危機感を持って対応しなければいけない」と述べた。

一方で、「すべての線区が黒字になる鉄道会社はない」とした上で、黒字の部分で赤字の部分をどうカバーするのかが問題で「JR西日本はすべての赤字線区を廃止にするとは考えていない」という認識を示した。

また、丸山知事は、JR西日本が関係する自治体へ個別に不採算路線の上下分離を打診していることに触れ、木次線が広島県に跨っているように、もっと広域的に対処する問題であると述べた。

映画の舞台にもなった木次線亀嵩(かめだけ)駅。出雲横田駅の隣接駅。映画の舞台にもなった木次線亀嵩(かめだけ)駅。出雲横田駅の隣接駅。

加えて、現在のJR各社は国民負担により国鉄の債務を削減された上で発足しているという歴史的な経緯を踏まえると、不採算路線を地方における個別の問題とするのは筋違いで、まず先に、国鉄の分割民営化という仕組みをつくった国がどう受け止めるのかを示す必要があるのではないかとも述べ「国民的な感覚からすると、ちゃんと維持してもらうというのが私の基本認識だ」とした。

収支データの出し方にも疑問を呈しており、コロナ禍における数字の悪化に理解を示しながらも、コロナ禍がこの先も続くことを前提にしたJR西日本の姿勢を批判。コロナ禍がいつまで続くのか、コロナ禍以前のどの時点まで数字が回復するのが妥当なのかという点がはっきりしない以上、経営上不安だという理由だけで自治体に負担を求めるのはいかがなものかと述べた。

JR西日本が打診しているという上下分離については「利益を生まない赤字資産は0円」という認識を示した上で、譲渡資産の問題が不透明なままでは難しいとした。

自治体の支援については、島根県や沿線自治体が一畑電車へ行なっている事例があることから、可能性を排除できないとしたが、黒字路線と関連事業で赤字を穴埋めすることが可能なJR西日本とは同列には語れないとした。

島根県が沿線自治体とともに支援している一畑電車。島根県が沿線自治体とともに支援している一畑電車。

これについては、JR北海道などを引き合いに出し、経営安定基金を創設して路線維持に活用することもひとつの案ではないかと述べている。

最後に丸山知事は、JR西日本が国の関与を忌避し、与し易い自治体へ負担を求めているのではないかと述べ、もっとストライクゾーンを広く採り、国の関与を積極的に求めるべきではないのかという持論で締めた。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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