土砂の運搬量10%増…運搬計画を量子コンピュータで最適化

最適なルートを探索
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清水建設とグルーヴノーツは、量子コンピュータを活用して建設発生土の運搬計画を最適化し、運搬量10%増の効果をシミュレーションで確認した。建設現場の生産性の向上が期待できる。

量子コンピュータ関連ビジネスを手掛けるグルーヴノーツと清水建設は共同で、土木工事の生産性向上を目的に、量子コンピュータなどのICT技術を活用してダンプトラックによる建設発生土(土砂)の運搬計画を最適化する実証実験を実施し、その効果を確認した(1月13日発表)。

清水建設による土木工事の土砂運搬ルートに量子コンピュータを適用したシミュレーションでは、走行台数を変えずに1日当たりの運搬量を約10%増加できた。現在は実車によるテスト走行を実施しているという。

◆量子コンピュータを活用して

高速道路やトンネル、ダムなど、土砂の搬出入量が膨大な建設現場では、運搬作業の効率が工事全体の進捗を左右する。現在、土砂の搬出入ルートが複数ある場合、ダンプトラックごとに当日のルートを固定して運搬している。しかし、この方法では突発的な渋滞などへの対応が難しく、状況に応じたリアルタイムなルート選択が課題だ。

清水建設はこれまで、国土交通省が掲げる建設現場の生産性20%向上を目指す方針を受け、建設現場においてICT技術を積極的に活用している。運搬効率の課題解決に取り組むべく、グルーヴノーツをパートナーに、2020年3月より土砂運搬計画に関する実証プロジェクトを開始した。

◆リアルタイムに最適ルートを計算

プロジェクトでは、土木工事において、ダンプトラックが土砂の搬出場所と搬入場所、一部は待機場所を経由して行き来する際に、運搬条件やルートの混雑具合などを踏まえて、タイムロスの最も少ないルートを導き出す。ルート計画は、清水建設の工事現場で稼働するダンプトラック約40台に対して、グルーヴノーツの量子コンピュータを活用できるクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS(マゼランブロックス)」を用いて計算している。

プロジェクトではまず、ダンプトラックに搭載されたGPSのログデータをもとに、マゼランブロックスでルートごとのダンプトラックの走行車数や速度、滞留時間、ダンプトラックと土量の稼働率等の分析を行ない、顕著な低速運行エリアなど滞留状況を可視化する。次に、これらの滞留状況や運搬条件を考慮して最適なルートを探索する量子コンピュータモデル(イジングモデル)をマゼランブロックスで構築し、量子コンピュータマシンを通じて検証した。

その結果、走行台数を変えることなく1日当たりの運搬量を約10%増加できることを確認した。

◆走行実証も開始

現在は、マゼランブロックスでGPSデータやナビデータなどをリアルタイムに取得し、実際の道路交通状況を加味した最適なルートをドライバーに指示する走行実証を行なっている。

清水建設とグルーヴノーツは今後、ドライバーへのルート通知方法などについて検討し、本番適用に取り組んでいく。また、土砂の積載や排出場所の数がより多く複雑な運搬ルートを有する建設現場においても、マゼランブロックスの活用を進めていく。

《高木啓》

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