シールドトンネル工事をAIで支援 東急建設などが掘進システムを共同開発

システムの運用イメージ
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東急建設、Automagi、協立電機の3社は6月2日、トンネル工事に使用するシールドマシンの操作をAIで支援するツール「シールドマシンAI掘進システム」を共同で開発したと発表した。

シールドマシンAI掘進システムは、シールドマシンの掘進制御において特に重要な切羽の圧力調整と機体の方向制御に着目し、AIによってこれらの制御の支援および自動化を目指している。

同システムは、シールドマシン掘進時に得られる様々な計測データを取り込み、学習することで、最適な制御量を予測する「AI予測システム」と、予測した制御データをグラフ等に可視化し、シールドマシンに伝送する「AIアシストツール」によって構成されている。

これらのデータを確認しながらオペレーターが操作する「制御支援モード」と、オペレーターでなくAIが自ら制御を行う「自動制御モード」の2つのモードを搭載している。

シールドマシンを使用したトンネル工事では、トンネルの最先端(切羽)における地盤の圧力が大きい場合には、切羽直上の地表面に隆起が生じ、圧力が小さい場合には逆に沈下が生じる恐れがあり、切羽掘削面の圧力を適切な値に維持しながら掘り進める必要がある。

また、計画通りにトンネルを構築するためには、シールドマシンの精緻な方向制御が要求される。しかし、掘削する地盤の条件やシールドマシンの位置・姿勢などに応じた掘進制御は、オペレーター個人の経験と技能に依存しており、その技術をいかに継承し、安全と品質を安定的に維持するかが喫緊の課題となっている。

実証実験を行った都内の工事では、掘削対象の地盤のほとんどが超軟弱な粘土質の層で、他の工事に比べて切羽の圧力が変化しやすく、またシールドマシンが沈下しやすいため、掘進制御が極めて困難だった(3月発表)。

実験では、制御支援モードで切羽の圧力調整と機体の方向制御の両方を行い、自動制御モードでは、切羽の圧力調整のみ行った。結果として、制御支援モードの実験では高い予測精度が確認でき、オペレーターが自らの判断に誤りがないことをチェックするためのツールとして有用であることがわかった。

このほか、自動制御モードによる切羽の圧力制御実験では、所要の精度内で切羽の圧力を保持しつつ、シールドマシンを掘進させることができた。

今後3社は、複数の作業所で実証実験を重ねてデータを蓄積し、同システムの予測精度の向上と機能の拡張に取り組む。

《保知 明美》

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