“足着き”の不安を解消する車高下げ機能がすごい!ショーワの電制サス「EERA」を体験

佐川健太郎氏がショーワの技術を体験取材。アフリカツインで両足ベタ着きが可能な「ハイトフレックス」に驚き
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ショーワの新型電子制御サスペンションの体験試乗会に参加してきた。長年にわたり2輪、4輪のサスペンションのトップサプライヤーとして培われた技術とノウハウが投入された最新システムの全容が公開されたのだ。

試乗会が行われたショーワのテストコースは、北米と欧州の典型的な路面を再現したワインディングや凹凸や段差のある特殊路、オフロードコースなどがあり、あらゆる走行環境でサスペンションの性能を試すことができる。試験車両はホンダ『CRF1100Lアフリカツイン』が用意された。

ショーワの「EERA」(イーラ)は電子制御式油圧バルブによって減衰力を制御する仕組みで、既存のサスペンションの性能を損なうことなく最適性能を目指したものだ。「サーキットで速く、しかも快適さも欲しい」、「車高が高いバイクでも、足着きを良くしたい」など既存のバイクの常識では難しかった相反する要素を解決するという。

頭脳を持ったサスペンション

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基本的には各種センサーからの情報をショーワ独自のロジックで解析し、車両に搭載されたECUと協調しながら前後サスの状態を制御する仕組みになっている。その制御は1000分の1秒という細かさで、走行中は常にコンマ数秒のうちに最適なサスペンションの状態へと調整し続けるというから驚きだ。まさに頭脳を持ったサスペンションである。

EERAは2018年からカワサキ『ZX-10R』や『ヴェルシス1000』、『Ninja H2 SX』などに導入されてきたが、2020年からCRF1100Lアフリカツインに「ジャンプ着地制御」を投入。これは着地の瞬間に減衰力を制御して衝撃を和らげつつ、同時にリバウンドの振幅を最小限に抑えることで姿勢を安定させる機能である。

さらに今回の試乗車には新たに「スカイフック」機能が搭載されていた。凹凸のある路面でもバネ下で衝撃を吸収し、まるで宙に浮いているかのような快適な走りを実現するもので、いずれ市販車にも投入が期待される機能となっている。

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アフリカツインで両足ベタ着き

佐川健太郎氏がショーワの技術を体験取材。アフリカツインで両足ベタ着きが可能な「ハイトフレックス」に驚き佐川健太郎氏がショーワの技術を体験取材。アフリカツインで両足ベタ着きが可能な「ハイトフレックス」に驚き
というように、EERAには多種多様な機能が盛り込まれているが、その中で最も印象的だったのが「ハイトフレックス」という機能だ。

これは停止時に自動的に車高を下げるシステム。試験車両はアフリカツインの欧州STDモデルがベースとなっているため、シート高860mmとけっこうな高さ……。のはずが跨ってみると「あれっ」と言うほど低くてびっくり。自分の場合(身長179cm/体重73kg)、両足ベタ着きでヒザが曲がるほど。それがエンジンをかけて前後に車体をゆすってサスペンションを屈伸させると、あら不思議。車高がだんだん上がってくるではないか。

ショーワ・イーラ・ハイトフレックスショーワ・イーラ・ハイトフレックスこれがショーワ独自の「セルフポンピングシステム」で、サスペンション自体のストロークする動きを利用して内部のオイルを圧送することでスプリング・プリロードや車高を自在に調整できる。従来の電制サスのように大きな動力を必要とするアクチュエータを使っていないため、シンプルかつ軽量コンパクトな構造にできるメリットがある。加えて低コストを実現しているという。

さらに走り出すとディスプレイに表示されたパラメーターの数字が徐々に上がってきて20~30秒で車高が理想値になる。走行中はライダーの体重や荷物の積載重量にかかわらず車体姿勢を自動的に最適化してくれるという。セルフポンピングという機構上、車高調整には少々時間がかかるようだが、これにも理由があって車体の姿勢変化に徐々にライダーを慣らす意味もあるそうだ。

ただし、ギャップなどでサスペンションが急激に大きくストロークした場合などは、一瞬でパラメーターを最大値まで持ち上げることで姿勢を安定させてくれる仕組みだ。

乗り心地と足着き、スタイルまで自在に変化

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一方、停止時にはその直前(約1秒前)に予測して車高をスムーズに下げて停止と同時に油圧が解放されてプリロードが全抜きになり、ぺしゃんと車高が下がる。その動きはまったくスムーズで違和感もない。ショーワのエンジニアの話では今回のアフリカツインで約50mm下がる設定とのこと。正直言って、今回試したEERAの機能の中でもこれが最も画期的だと思った。

今までは体格や体力によって乗り手を選んでいたビッグアドベンチャーだったが、足着き性のハードルが下がったことで一気にユーザーのすそ野を広げる可能性を秘めている。ショーワではクルーザーモデルなどへの採用も検討していて、乗り心地の良さを追求しつつ停止時にはロー&ロングフォルムを際立たせるなど、より個性的なスタイリングを表現するための技術にもつなげたいとしている。

安全性や利便性とともに、モーターサイクルの楽しさも広げる新たなアプローチとして期待したい。

佐川健太郎氏がショーワの技術を体験取材佐川健太郎氏がショーワの技術を体験取材

《佐川健太郎》

佐川健太郎

早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。メーカーやディーラーのアドバイザーも務める。(株)モト・マニアックス代表。「Yahoo!ニュース個人」オーサー。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

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