米国のSSCノースアメリカ社は10月19日、新型ハイパーカーの『トゥアタラ』(SSC Tuatara)が最高速508.73km/hを計測し、世界最速の量産車記録を更新した、と発表した。
トゥアタラは2011年夏、コンセプトカーとして発表された。従来の『アルティメットエアロ』の後継モデルとなり、車名のトゥアタラとは、ニュージーランド産のムカシトカゲに由来する。
アルティメットエアロは2007年、最高速413km/hを計測し、当時の市販車の最高速記録と認定された。しかし、ブガッティ『ヴェイロン』の「16.4スーパースポーツ」が2010年7月、最高速431.072km/hを叩き出し、世界新記録を更新した。
5.9リットルV8ツインターボ搭載
トゥアタラの量産モデルのミッドシップには、2011年のコンセプトカーの7.0リットルから、排気量を5.9リットルに縮小したV型8気筒ガソリンツインターボエンジンを搭載する。ネルソンレーシングエンジンのトム・ネルソン氏と共同開発・製造されたこのエンジンは、最大出力1350hpを発生する。混合燃料の「E85」使用時には、最大出力は1750hpに引き上げられる。
トランスミッションは、7速AMT(オートマチック・マニュアル・トランスミッション)の「CIMA7」を組み合わせた。
また、トゥアタラの量産モデルには、堅牢なカーボンファイバー製モノコックに、フルカーボン製の軽量ボディを採用した。前面空気抵抗を示すCd値は0.279と優れたエアロダイナミクス性能を実現する。240km/h以上の速度域で、トゥアタラはフロント37%、リア63%の空力バランスを維持し、4輪すべてで正確なダウンフォースを確保するという。
世界最高速記録と認定されるための条件
最高速チャレンジは10月10日朝、米国ネバダ州ラスベガス郊外の州道160号線を閉鎖して、英国出身のレーシングドライバーのオリバー・ウェブ選手によって行われた。世界記録と認定されるためには、顧客が購入できる量産車であり、ストリートタイヤと非レース燃料を使用する必要があった。
また、サーキットや滑走路ではないリアルワールドの運転条件とするため、公道で行うことも求められた。GPS測定システムによって速度を追跡し、検証のために2人の公認オブザーバーが立ち会った。さらに、同じルートを往復走行し、2つの最高速を平均する。これは、風や勾配による影響を考慮したためだ。
復路の最高速は公道世界記録の532.93km/h
オリバー・ウェブ選手が運転するトゥアタラは、往路484.53 km/h、復路532.93 km/hの最高速を計測した。そして、15個のGPSによる追跡測定により、すべての世界記録基準が満たされていることを確認したうえで、平均速度の508.73km/hが、「世界最速の量産車」の世界新記録と認定された。
SSCのジェロッド・シェルビーCEOは、「最初の車のアルティメットエアロで最高速413km/hを計測してから10年以上が経ち、トゥアタラでふたたび世界をリードした。この記録を打ち負かすのは、難しいだろう」 と述べた。オリバー・ウェブ選手は、「より良いコンディションなら、もっと速く走ることができたはず。533km/hに近づく直前の5秒間に、トゥアタラの速度は30km/h以上伸びていた」と明かした。
また、トゥアタラは、世界最速の量産車の新記録に加えて、公道で達成された世界最高速532.93 km/hを含む3つの世界新記録も打ち立てている。