まちづくりに人流カメラ3Dライダーを活かす…岡崎市 総合政策部 企画課 係長 鈴木昌幸氏[インタビュー]

まちづくりに人流カメラ3Dライダーを活かす…岡崎市 総合政策部 企画課 係長 鈴木昌幸氏[インタビュー]
  • まちづくりに人流カメラ3Dライダーを活かす…岡崎市 総合政策部 企画課 係長 鈴木昌幸氏[インタビュー]

愛知県岡崎市は自動車産業の集積エリアに位置し、スマート技術を活用したまちづくりを進めている。岡崎市総合政策部企画課係長の鈴木昌幸氏に聞いた。

鈴木氏は、9月30日に開催するオンラインセミナースマートシティ・先行モデル4市の実像~いよいよ社会実装へ~に登壇し詳説する予定だ。

自動車産業の集積地の”暮らしの中枢中核都市”を目指す

---:愛知県岡崎市はどのような地域ですか?

鈴木氏:岡崎市は歴史的には徳川家康公生誕の地(岡崎城)として知られています。

また地理的に恵まれており、時代に応じて姿を変えて、機能を集積させてきました。鎌倉時代は門前町、そして城ができてからは城下町、東海道が通っているため宿場にもなりました。そして明治時代は廃藩置県により名古屋県と額田県(合併して愛知県)に分けられ、額田県の県庁は岡崎城に置かれました。

平成になると、岡崎市が位置する西三河エリアは豊田市、刈谷市、安城市などに、トヨタ自動車、アイシン精機、トヨタ自動織機など自動車関連企業の本社が集積し、西三河だけでも日本の製造品出荷額の8%をたたき出しています。この8%は製造品出荷額2位の神奈川県よりも多い数字です。このような自動車産業の影響を受けて、西三河エリアでは、豊田市、刈谷市などは二次産業のまち、岡崎市は部品を供給するサプライヤーや三次産業が多く、従業員と部品を供給するまち(ベットタウン)という状況になっています。

人口は西三河エリアの中でも豊田市の42万人に次いで、岡崎市は39万人と多いです(その他の自治体は約10万人)。

このような背景から、岡崎市は暮らしの中枢中核都市を目指しています。

データにこだわる「AIを用いた中核都市分析」

---:AIを活用して中核市要覧データを分析していると聞きました。客観的に分析できている自治体は少ないと思います。そこから見えてきた特徴的なことを教えてください。

鈴木氏;道路延長距離が長いこと、軽自動車税が多いこと、粗大ごみが少ないことなど一見すると子育てとの関連性が薄い項目が、合計特殊出生率が高いこととの相関性を見出すことができました。つまり、クルマでの移動がしやすく、女性は子供を産んだ後も軽自動車を使って仕事や子育てに活躍していて、転勤や引越しが少ないこのような地域では、子育て層は安心して子供を産み育てやすいということです。

コンパクトシティよりも少しゆったりとした都市の方が、合計特殊出生率が高くなる傾向にあるようです。

人流カメラを用いてエリアマーケディング

---:民間のエリアマーケティングの手法や自動車関連企業との連携を上手くまちづくりに取り入れてスマートシティに取組んでいるようですね。

鈴木氏:活気のあるまちには民間企業の店舗の出店が欠かせません。民間企業はどのように出店を決めているかというとエリアマーケティングツールを使って、出店を検討しているエリアの商圏人口や競業店舗があるかといったデータから、出店する価値があるかどうかを見る候補地に行き、数取り機で人の動きをカウントする売上予測を立てるというプロセスを行っているようです。

そこで岡崎市もこの手法に習って、企業を誘致しようと考えています。2019年から人流カメラ(駅改札に4台、街中に4台)を設置して、通行人の数、性別、年代を日々集計しはじめました。今年度中に10台追加する予定です。個人情報の問題が懸念されますが、映像を即座にソフトウェアで読みとってテキストに変換し、動画を残しませんので問題ありません。新型コロナウイルスの緊急事態宣言中も集計した人流データから年代・性別毎のの外出動向の把握に役立ちました。

3Dライダーを用いて三密回避とまちづくり

---:岡崎市は三河花火が有名で、花火大会の警備員不足をスマート技術で補おうとされているようですね。

鈴木氏:東京オリンピック・パラリンピック組織委員会のアドバイザーとして群衆事故の防止対策にも携わられており、渋滞学がご専門の東京大学の西成活裕教授にご協力いただいています。

デンソーの3Dライダーを用いてイベント時の人流を見える化しています。群衆の制御には、事前の制御と事中の対策が非常に重要です。たとえば、事中には密状態のアラートを出して「後で来てください」と知らせたり、サイネージで会場に行かずとも会場の混雑具合がリアルタイムで見えるなどエンタメ要素を入れながら面白くできないか考えています。

すでに2019年の岡崎花火大会から活用をはじめており、2020年度は来街者や居住者に情報を共有できるようにしたいと考えています。これらスマートシティの取組により新技術の便利さを実感できる、一歩先の暮らしを実現できるまちを目指し、今後もまちづくりを進めていきます。

鈴木氏が登壇するオンラインセミナースマートシティ・先行モデル4市の実像~いよいよ社会実装へ~は9月30日開催。

《楠田悦子》

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